物語のような

【ものがたりのような】形容詞句

使い分けの視点

「物語のような」は劇的、非現実的、整いすぎという三方向へ読めます。「童話」「寓話」「絵本」と下位の型を示せば焦点が絞れますが、上位語のままなら話者が思い描く典型までにじみます。賛辞か皮肉かを周囲の一文で定め、曖昧さを残す場合も意図して残します。

同義語

同品詞の類義語

小説めいた
童話のような
ドラマめいたcolloquial
寓話的な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

絵本さながらの
筋書きのある
紙の中から抜け出たような文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

御伽噺のような文芸的
ページから滲み出るような文芸的
舞台の幕が上がるような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

絵空事めいて文芸的
筋立てのように

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

筋書きを纏う文芸的
頁の中を歩く文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

御伽の趣文芸的
童話的情景文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

現実離れした筋書きめいた文芸的
頁から零れたような文芸的
本の中の世界めいた

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

寓話の輪郭エッセイ関連

例文: 王冠を拾った貧者の選択が、政変に寓話の輪郭を与えた。

上位語を比較先に選ぶと、何が起きるか

同じ一言が、賛辞にも難詰にもなる場合があります。半生を語り終えた相手に向かってこれを言えば、波乱と再起を讃えたことになる。ところが提出された企画書の見通しに向かって言えば、現実味を欠くという指摘に変わります。褒めと貶しが同じ形に同居する表現はほかにもありますが、この場合は対立の軸が二本ではなく三本あるところが少し込み入っています。出来事の配置がよくできすぎていること、現実にはありそうにないこと、展開が劇的であること。三つは重なりながらも、別々の焦点です。

なぜ焦点が分散するのか。比較の相手として選ばれているもののカテゴリ上の位置に、理由があります。矢や氷や炎を比較先に取る比喩では、相手が具体物なので、取り出せる性質があらかじめ限られている。ところがこの表現の比較先は、小説も童話も寓話も伝承も含みこむ上位のカテゴリです。上位語は、下位に属するものたちの共通部分だけを内包として持ちますから、輪郭が薄くなる。輪郭の薄い相手から性質を取り出そうとすれば、読み手ごとに違う成分が拾われるのは当然の帰結です。上位へ一段上がるたびに、指せる範囲は広がり、指した中身は痩せていきます。

さらに、上位カテゴリには典型例という厄介な現象が付いてきます。カテゴリの中心にどれを置くかは、話し手ごとに違います。典型例として長編小説を思う人、絵本を思う人、口伝えの昔話を思う人では、この一語から受け取る質感が別物になる。しかもこの二字自体が、書かれた作品を指す用法と、出来事の並べ方や語り口そのものを指す用法の両方を持っていて、後者を中心に置く読者には、作為の指摘としてまず届きます。書き手が劇的な起伏を想定して置いた比喩が、読者の側では素朴で予定調和な筋立ての意味に取られる。誤読というより——上位語を使ったときに構造的に発生する分岐です。辞書に多義として立項されるより早く、運用の場で意味が割れている。

もっとも、この曖昧さは欠点とばかりは言えません。人物の台詞として使えば、その人物がどの典型例を思い描いているかが、周辺の語彙から推測できる形で立ち上がります。昔話を典型に持つ人物と、翻訳小説を典型に持つ人物とでは、同じ一語を口にしても像が違って見える。比較先の輪郭が薄いということは——話者の側の輪郭を映す余地が大きいということでもある。上位語による比喩は、対象について語っているつもりで、話者について語ってしまう性質を持っています。会話文の中でだけは、この性質が資産に変わります。

実作で焦点を固定したいなら、方法は二つです。ひとつは、三つの焦点のうち採りたいものを直前か直後の一文で言語化すること。筋書きが整いすぎている点を問題にしているのか、起きそうにない点を問題にしているのかを、比喩の外側で示す。もうひとつは、比較先を下位語へ落とすこと。寓話か、絵本か、伝承か。下位へ降りるほど輪郭は濃くなり、拾われる成分は絞られます。上位語のまま使うのは、絞りたくないときだけにする。曖昧さを残すこと自体が選択なのだと分かっていれば、この表現は手垢のついた比喩ではなくなります。使い古されているのは形であって、機能のほうはまだ整理されていません。

文: hakadoru.ai 編集部

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