神話のような

【しんわのような】形容詞句

使い分けの視点

「神代めいた」「古譚のような」は古い語りの気配、「叙事詩的な」は規模の大きい英雄譚、「聖典に記された」は権威ある原典を連想させます。「神話のような」は讃辞にも疑いにも転ぶため、直後の文で語り手が仰ぎ見るのか、作られた伝説を疑うのかを示しましょう。

同義語

同品詞の類義語

神代めいた文芸的
古譚のような文芸的
叙事詩的な文芸的
ミトスめいた文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

聖典に記された文芸的
天地創造を思わせる文芸的
古代の語りめいた文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

天空を裂く神々の業のような文芸的
聖書の頁を捲るような文芸的
古代から響くような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

聖典めいて文芸的
古譚めいて文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

古代の趣を纏う文芸的
始原を思わせる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

古代の趣文芸的
聖譚の気配文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

始原の記憶を呼ぶような文芸的
天と地を繋ぐような文芸的
祈祷文のような文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

評価を反転させるエッセイ関連

例文: 英雄を讃えた記事は、消えた記録を挙げる次の一文で読者の評価を反転させる。

讃辞と疑いが同居する——語基は同じ、構文だけが別の道を歩いた

新聞の見出しで「安全神話が崩れた」という言い方を見かけます。ここでの神話は、多くの人が疑わずに信じていた誤り、という意味です。同じ紙面のスポーツ欄には「神話のような一戦」と書いてある。こちらは最上級の讃辞です。同じ語基が、同じ日に、同じ媒体で、正反対の評価を帯びている。誤植ではなく、どちらも自然に読める。

語の意味が時代とともに悪いほうへ滑る現象は珍しくありません。もとは敬意を含んでいた「貴様」や「お前」が、現在では敬語として使えなくなっているのはよく知られた例です。評価の下降はゆるやかに起きて、途中では両方の読みが並存します。「神話」の場合、明治期に西洋語の myth の訳語として整えられ定着したとされますが、そこから百数十年で、複合名詞の位置にあるものだけが評価を下げた。成長神話、不敗神話、安全神話——いずれも、崩れることを前提に呼ばれています。崩れないものを人は神話とは呼ばない。崩壊の予告が語の中へ入り込んでいるという点では、バブルや幻想といった語の隣に並べたほうが実態に合います。

ここで気づくのは、悪化したのが語そのものではなく、特定の構文だけだということです。名詞を前に置いて複合名詞を作る型では下がり、「〜のような」で連体修飾に立つ型では下がっていない。同じ語基が構文ごとに別の履歴を持っている。意味変化を語の単位で語る癖がついていると、この分かれ方は見落とされます。実際には、語は用いられる型ごとに別々の頻度分布と別々の文脈を持ち、その分布ごとに評価が沈殿していく。

同じ分かれ方は、近い語でも起きています。伝説は、連体で使えば讃辞です。伝説の投手、伝説の一夜。ところが複合名詞の後部に立つと、都市伝説のように、根拠のない話という意味へ寄る。連体では持ち上げ、複合では疑う。配分が神話とそっくり同じです。二つの語が独立に同じ道をたどったとは考えにくく、むしろ構文の型のほうが評価を配っている、と見るのが自然でしょう。語が意味を持ち、構文はそれを運ぶ器にすぎない、という前提を外してみると、この一致は説明しやすくなります。器の側に、あらかじめ評価が積もっている。頻度の面でも複合名詞の型のほうが生産的で、新しい語を前に置けばいくらでも作れます。作られるたびに、崩れるという前提がついてくる。

とはいえ、これも言いすぎかもしれません。「神話のような」にも、疑いの色が差す用例はあります。「神話のような話だが、実際には帳簿が残っている」と書けば、後半で否定される前提として置かれている。つまり讃辞の型が完全に守られているわけではなく、後続の文脈しだいで倒れる。むしろこの句は、単独では評価が定まらない中立の位置にあって、隣に何が来るかで讃辞にも疑いにも転ぶ、と言ったほうが正確です。複合名詞のほうは隣を待たずに評価が決まっている。成長神話、と書いた時点で、その成長はもう終わったものとして扱われています。その差が本体だと思います。

原因を推測するなら、複合名詞の型は対象を分類する働きを持つからでしょう。分類する語は、話者がすでに外側に立っていることを示します。外から名づける以上、話者はそれを信じていない。一方「〜のような」は比喩で、対象を何かに似ていると言っているだけで、語り手の立ち位置を明かさない。明かさないから、讃辞としても使えるし、疑いの前置きとしても使える。英語の側にも似た分業がありますが、担い手が違います。名詞の myth は It's a myth that ... の形で誤った通念を指すのに使われ、形容詞の mythic は讃辞の側に立つ。あちらは品詞が分担し、こちらは構文が分担している。分ける必要があるという事情のほうは共通していて、分け方だけが言語ごとに違うわけです。

書くときの扱いとしては、この句を出したあと数行のあいだに「神話」を単独名詞で置かないほうが安全です。置いた瞬間に、複合名詞のほうが持っている外側の視線が読み込まれて、直前の讃辞が皮肉に見えはじめる。逆にそれを狙うなら、順序を守って並べればいい。讃辞を先に、名詞を後に。二文で評価がひっくり返ります。順序を逆にすると効きません。疑いが先に立ったあとで讃辞を置いても、読者はもう外側から眺めています。同じ語が二つの履歴を持っているというのは、書き手にとっては、切り替えのスイッチが一つ余分にあるということでもある。

文: hakadoru.ai 編集部

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