艶かしい

【なまめかしい】形容詞

使い分けの視点

口語的な魅力なら「色っぽい」、古風で距離を置く観察なら「妖艶な」「艶かしい」が合います。対象の属性と断定せず、誰の視線が袖の動きや声の間を魅力として拾ったのかを明らかにします。

同義語

同品詞の類義語

色っぽいcolloquial
妖艶な文芸的
艶やかな文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

色香を放つ文芸的
熱を帯びた
湿り気を帯びた文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

絹のような文芸的
牡丹のような文芸的
月光にぬれたような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

しっとりと文芸的
艶やかに文芸的
悩ましげに

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

魅了する
匂い立つ文芸的
肌を紅潮させる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

色香文芸的
妖気文芸的
色気colloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

息を呑むほどの
目のやり場に困るcolloquial
酔わせるような文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

観察者の位置エッセイ関連

例文: 語りが観察者の位置へ退いたとき、踊り手の若さが急に遠く見えた。

未熟がやがて色になる——「なま」から出発した語のたどりかた

平安期の用例を順に眺めていくと、現代の語感では受け止めきれない例が続きます。若い男の立ち居振る舞いに使われ、庭の草木に使われ、調度の設えにも使われている。中古の「なまめかし」は、若々しく瑞々しいこと、そこから転じて上品で優美であることを広く指した語で、必ずしも異性を惹きつける気配を伴っていませんでした。今この語を人に向けて使えば、ほぼ一つの方向にしか読まれません。千年のあいだに、意味の適用範囲が狭まっている。

語構成に戻ると、出発点がはっきりします。「なま」は生。煮えていない、熟していない、仕上がっていない状態です。生煮え、生半可、生木の「なま」と同じ。そこに様子を表す接尾が付いて、「未熟に見える」が原義に近い形になる。若さを未完成として捉え、その未完成さを美として評価する感覚が、この語の土台にあった。だから対象が人でも植物でも道具でも構わなかったわけです。語構成のどこを探しても、色情の成分は出てこない。

その後の道筋は、意味の特殊化として説明できます。優美一般を指していた語が、優美のうち特定の種類——異性に対して働く優美——へ絞りこまれていった。似た経路をたどった語はほかにもあります。表記に「艶」の字が当てられたことが、この絞りこみを加速した面もあるかもしれません。ただしこれは順序が逆かもしれず、意味が先に動いたから字が当たったとも読める。どちらが先かを決める材料を私は持っていないので、ここは保留にしておきます。

同じ経路をたどった語を思い出しておくと、この動きが例外でないことは分かります。「かわいい」はもともと痛ましい、気の毒だという意味を持っていて、そこから愛らしいへ移った。「やさしい」は身が細るような思い、恥じ入るさまを指す語だったと説明されます。いずれも、感情を表す語が評価の語へ移り、移った先で用法を狭めている。感情語は具体的な身体感覚から出発し、抽象的な評価へ吸いあげられ、最後に特定の対象へ張りつく——この三段のうち、どこで止まったかで現代語の使い勝手が決まります。

保留のまま先へ進むと、もう一つ引っかかることがあります。現代語でも、この語は「色っぽい」と完全には交換できない。若い恋人同士の軽いやりとりに「色っぽい」は置けても、この語を置くと文の温度が急に下がって、語り手が一歩退いた位置から観察しているように読めてしまう。会話文にはほとんど乗らず、地の文でしか働かない。口語の層に降りてこないまま、書き言葉の層に留まっている語なのだと思います。

そう考えると、意味が狭まったという整理だけでは足りません。狭まると同時に、この語は使用域のほうも狭めた。中古で庭にも道具にも使えたのは、それが日常の評価語だったからで、今そうでないのは特殊化の結果というより、書記語として保存されたことの結果でしょう。実務上の帰結は分かりやすい。この語を選ぶと、視点が自動的に語り手の側へ寄り、対象は観察される位置に置かれます。視点を人物の内側に置いたまま使うと、語彙だけが外へ抜けて、文の座りが悪くなる。使うなら、誰が見ているのかを先に決めておくこと。古い層を残した語は、書き手に位置取りを要求します。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →