現代的

【げんだいてき】形容動詞

使い分けの視点

「現代的」は発話時点の今へ係留され、世界が動くと文章へ見えない日付を残す語です。「今風の」は軽い流行、「モダンな」は特定時代の都市感覚、「同時代の」は評価を抑えた位置関係を示します。具体的な道具や仕草を添え、誰の今かを明確にします。

同義語

同品詞の類義語

今風のcolloquial
モダンなcolloquial
当世風の文芸的
同時代の

類義句

同品詞の慣用的言い換え

時代を映した文芸的
新しい感性の
今の息遣いのある文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

都市の鼓動のような文芸的
ショーケースのような
最先端の展示みたいなcolloquial

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

斬新に
今風にcolloquial
都会的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

時代を映す文芸的
刷新する

体言的言い換え

用言を体言に変換

今様文芸的
モダニティ文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

最新の空気をまとった
都市の匂いをまとった文芸的
時流に乗った

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

見えない日付印エッセイ関連

例文: 最新と書いた瞬間、原稿には見えない日付印が押され、未来の読者へ時代が露出した。

ハイカラからナウいまで——「今」を名指す語の賞味期限

明治の東京で、丈の高い襟、つまりハイカラーのシャツは、西洋帰りの若者の記号でした。そこから生まれた「ハイカラ」という形容は、当時としては最先端を指す語であり、同時に新しがり屋への冷やかしでもあった。そして今日、「ハイカラさん」という響きが呼び出すのは、むしろ袴に編み上げ靴という古き良き時代の書割です。最新を名指した語が、百年後には懐古の小道具になっている。新しさを意味する語は、新しさを意味したがゆえに古びる。この逆転は偶然の不運ではなく、この種の語が最初から背負っている構造的な宿命です。

系譜をたどると、どの時代にも「今風」を意味する語が立っていたことが分かります。平安時代の「今様」は文字どおり「当世風」の意で、当時の流行歌謡のジャンル名にもなりました。院政期に熱狂的に歌われたその歌謡も、いまでは古典文学の教材です。時代が下れば「当世風」があり、大正から昭和初期には「モダン」が都市の空気を象徴し、昭和後期には英語の now に形容詞語尾を付けた「ナウい」が現れて、そして退場しました。ほとんどが死語になるか、その時代を再現するための小道具に転じています。理由は単純で、これらの語は意味の中身ではなく、参照点——発話された時点の「今」——に係留されているからです。世界のほうが動けば、語は桟橋に繋がれたまま置き去りになる。

「現代」という区分そのものも動きます。歴史や文学史の教科書では、近代と現代を分ける線が時代とともに引き直されてきました。ある世代が同時代の文学として読んだ作品群は、次の世代には一時代前の古典として教えられます。つまり「現代的」と書いた瞬間、その文章には見えない日付印が捺される。書いた本人には無色透明の語に見えるのに、十年後の読者にはくっきりと年代が読めるのです。この語の透明さは、書き手にだけ見えている透明さだと言ってよい。

意味変化の類型として見ても、これは少し変わった型です。よく知られる通時変化は、意味の拡大、縮小、良化、悪化といった語義そのものの移動ですが、この語の場合、語形も語義も動いていません。動いたのは世界のほうで、語はその場に立ち尽くしている。係留点のずれ、と呼ぶのが正確でしょう。評価の反転も観察できます。無条件の褒め言葉として通用する時期があり、やがて「いかにも現代的な造りだ」のように軽い皮肉を帯びる時期が来る。賛辞と冷やかしのあいだを往復するこの振り子も、参照点が動くことの副産物です。

書く側は、この賞味期限を逆手に取ることができます。語り手に「現代的」と言わせれば、その語り手が立っている時代と価値観が透けて見える。時代小説の登場人物に「当世風の着こなし」と言わせるのと同じ仕掛けが、現代を舞台にした作品でも作動します——ただし今度は、作者自身の立ち位置に向かって。数十年後の読者にとって、いま書かれたこの語はすでに資料です。それを恐れて避けるか、承知の上で時代の空気ごと封入するか。どちらを選んでもよいが、無自覚に使える語ではありません。

文: hakadoru.ai 編集部

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