肌寒い

【はだざむい】形容詞

使い分けの視点

季節の変わり目を身体の輪郭で捉えるなら「肌寒い」、弱い冷えなら「うすら寒い」、空間全体の冷たさには「冷え冷えした」が合います。「鳥肌が立つ」「ぞくりと」は恐怖にも読めるため、原因を周囲で限定します。人物に体感を報告する余裕がある場面かも確かめます。

同義語

同品詞の類義語

うすら寒いcolloquial
冷え冷えしたcolloquial
薄ら冷たい文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

羽織が欲しいcolloquial
首筋に沁みる文芸的
鳥肌が立つ

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

秋口のような
明け方のような文芸的
石蔵に入ったような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

うすら寒くcolloquial
ぞくりとcolloquial
ひやりと

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

冷え込む
身震いする
悪寒がする

体言的言い換え

用言を体言に変換

秋冷文芸的
肌冷え文芸的
涼気文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

袖口に入り込む文芸的
背を丸めたくなるcolloquial
物寂しい文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

身体の輪郭エッセイ関連

例文: 風が薄着の肩を包み、旅人は久しぶりに身体の輪郭を意識した。

秋の寒さを刻む語彙——季語の細かさは何の細かさか

歳時記の秋の部を開くと、寒さの段階を刻む語がいくつも並んでいます。やや寒、うそ寒、そぞろ寒、そして肌寒。いずれも晩秋の季語として収められており、俳句の実作の場では区別して使われてきました。最初にこの並びを見たときの感想は、細かすぎる、というものでした。気温にすればせいぜい数度の幅を、これだけの語で分けている。分けきれるとは思えない。

しかし、しばらく眺めているうちに、その細かさは気温の細かさではないのだと気づきます。歳時記は自然の分類ではなく、体感を言葉で刻もうとした試みの蓄積です。うそ寒の「うそ」は薄いの意とされ、そぞろ寒はどことなく寒い状態を指す。どちらも寒さの量ではなく、寒さへの構えを言っている。実際にこれらを聞き分けられる感覚があるかどうかは疑わしく、むしろ語のほうが感覚を作った側面が大きいのではないかと思えてきます。語彙が先にあり、その区画に体感を当てはめて生活している。

その中に置いてみると、この一語だけは作りが違うことが見えてくる。ほかは寒さの程度や様態を修飾する形で成り立っているのに、これだけが身体部位を含んでいます。どれくらい寒いかではなく、どこで寒さを受け取ったかを言っている。同じ気温でも、足元から来る寒さなら足が、首から来るなら首が語彙に出てくるはずなのに、なぜか表面全体を指す語が代表になった。おそらく、この寒さは局所的ではなく、身体の輪郭に沿って一様に来る種類のものだからでしょう。輪郭を意識させる寒さ、と言い換えられます。

造語の形を並べてみると、もう一つ気づくことがあります。うすら寒い、そら寒い、うそ寒い、そして肌寒い。「〜寒い」という複合形容詞は一つの系列をなしており、前の部分が寒さの質を指定する構造は共通しています。ところが日常語として広く残ったのは、この一語とうすら寒いくらいで、ほかは季語や文語の側に留まった。生活語として生き延びたものが、部位を含む形だったというのは偶然かもしれません。それでも、抽象的な程度指定より、身体の場所を名指す語のほうが摩耗しにくかったと考えると、辻褄は合う。

近代以降の散文でも、この語は気温の記述と心理の記述の両方に使われてきました。冷え冷えとした関係、といった言い方と地続きの用法が広く見られます。ここで立ち止まりたいのは、比喩に転じやすい理由のほうです。輪郭を意識させるという性質が、そのまま孤立の感覚に接続する。他人と隔てられている面を、寒さが教えてくる。だから心理の比喩として使われたとき、この語は冷たさではなく、境界のほうを運んでいる。

書く側の実務として残るのは、この語が温度計ではないという一点です。人物が寒さを感じるためには、自分の身体に注意を向ける余裕がなくてはならない。逃げている途中の人物も、議論に熱くなっている人物も、この寒さを報告しません。したがってこの一語を地の文に置くことは、その瞬間、人物の注意が外の事件から自分の輪郭へ戻ったことの表明になります。季節を書いているつもりで、実際には注意の所在を書いている。秋の描写が冗長に感じられるとき、たいてい原因は語彙よりも、人物にまだ自分を見る余裕がない場面で季節を書いていることにあります。

文: hakadoru.ai 編集部

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