深刻

【しんこく】形容動詞

使い分けの視点

「深刻」は報道調の抽象名詞と結びつきやすく、宣言だけでは重さが伝わりません。「切迫した」は時間、「重篤な」は病状、「抜き差しならない」は当事者間の拘束を示します。数値、沈黙、具体的な損失を先に置けば、評価語を使っても場面の声を保てます。

同義語

同品詞の類義語

重大な
重篤な文芸的
切迫した文芸的
容易ならぬ文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

抜き差しならない文芸的
笑い事ではないcolloquial
看過できない文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

崖っぷちのようなcolloquial
爆薬を抱えたような文芸的
迷路じみた

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

厳粛に文芸的
重々しく文芸的
苦り切って文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

事態が差し迫る
胸を痛める文芸的
骨身にこたえるcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

危機
重み

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

洒落にならないcolloquial
取り返しがつかない
肩が重くなる文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

深刻化エッセイ関連

例文: 飢饉の深刻化という名詞の陰で、配給を止めた者の名が消えた。

直後に来る語がほとんど決まっている——連語に飲み込まれた形容動詞

手元の文章からこの語を含む一文を集めて、直後に何が来ているかを書き出してみると、集計するまでもなく傾向が見えてきます。問題、影響、事態、被害、状況。名詞の顔ぶれが数種類に収束し、しかもどれも抽象名詞です。人の表情にも使えるはずなのに、実際の出現はそちらへほとんど流れない。自由に使える形容動詞のつもりでいた語が、実態としては決まった相方としか出歩いていない。

計量の言葉で言えば、共起の偏りが強い。二語が一緒に現れる確率を、それぞれが単独で現れる確率の積と比べる指標がありますが、この語の場合、その比が特定の名詞に対してだけ極端に高くなります。結びつきが強いということは、片方が出た時点でもう片方が予測できるということで、予測できる語は情報を運びません。連語の中に沈んだ語は、文の中で一語ぶんの場所を占めながら、一語ぶんの驚きを供給しない。

ここで立ち止まっておきます。共起が偏るのは、抽象名詞の側の事情ではないのか。問題や事態は、そもそも程度を言われやすい名詞です。もっともな反論で、どちらの側の引力が強いのかは片方だけ見ていても分かりません。ただ、同じ位置に置ける「重大な」や「切迫した」を並べてみると、これらの相方はもう少し散らばる。重大な決断、切迫した呼吸。相方の広がりが違うのだから、名詞側の事情だけでは説明が足りない。

偏りの出どころには、文体の層という要素もありそうです。この語は報道の文章で目につきます。字を見れば、刻むという動作が入っている。深く刻まれた、という具体から出発したはずの漢語が、いまは公的な文章で被害の大きさを示す定型の担い手になっている。特定の文体に頻度が集中した語は、そこから離れた場所に置かれると、出身地の匂いを連れてきます。人物の内面を書いている途中でこの語が出ると、そこだけ記事の声になる。

派生形の分布も、同じ方向を指しています。この語は「〜化」という接尾辞をよく取り、進行そのものを名詞にしてしまう。誰が悪化させたのかを言わずに済む形で、責任の所在が文法的に消える。報道の語彙に定着した理由の一端はそこにあるはずで、物語の中で使えば、同じ働きが同じように起きます。人物の苦境をこの形で書いた瞬間、その苦境は誰のものでもない現象になる。

もうひとつ、頻度そのものが効いてきます。使用が増えるほど、その語が示す閾値は上がる。あらゆる不具合が重大と報じられる環境では、本当に重大なものを指す語が足りなくなります。頻度分布の上位に居続けた語が摩耗するのは、意味が変わったからというより、区別する仕事から降ろされたからです。

書き手にできる操作は、相方を替えることではなく、相方を外すことだと思われます。抽象名詞に付けず、述語の位置へ単独で置く。あるいは、この語を出さずに、読者が同じ判断に到達するまでの手順を書く。数値でも、動作でも、沈黙の長さでもいい。読者が自分で重さを見積もったとき、その見積もりは、こちらが宣言した重さよりも確実に長く残ります。

文: hakadoru.ai 編集部

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