女々しい

【めめしい】形容詞

使い分けの視点

「女々しい」は弱さを女性性へ結びつける評価を内蔵し、否定してもその序列が残ります。行動を描くなら「未練がましい」「煮え切らない」「腹が括れない」など、問題の所在を直接示す語が安全です。あえて人物の台詞に置く場合は、聞き手の反応も同じ場面へ置き、作品の判断ではなく話者の価値観として帰属を明確にします。

同義語

同品詞の類義語

未練がましい
煮え切らないcolloquial
意気地のないcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

肝の据わらない
腹が括れないcolloquial
諦めの悪い

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

水に浮く木の葉のような文芸的
枯れ草のような文芸的
蠟人形めいた文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

めそめそとcolloquial
ぐずぐずとcolloquial
未練たらしく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

尻込みする
愚痴をこぼすcolloquial
めそつくcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

未練
優柔不断
意気地なしcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

情けないcolloquial
湿っぽいcolloquial
骨の髄まで軟弱な文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

聞き手の眉エッセイ関連

例文: 侮辱の一語を放った将軍に対し、聞き手の眉が動いたことで、その尺度は将軍だけのものになった。

否定しても消えないもの——非難の中に埋め込まれた前提

この語が向けられる相手は、ほぼ男性です。女性に対して使っても、非難として成立しません。批判の言葉でありながら、批判の基準が語の内部にあらかじめ埋め込まれている。何かが劣っていると言うために、別の属性を劣位に置く必要がある構造になっています。だから使うたびに、話者は自分がその序列を採用していることを申告することになる。伝えたい内容は相手についてのことなのに、確実に伝わってしまうのは話者についてのことです。

語用論では、こうした埋め込まれた内容を前提と呼びます。前提の厄介な性質は、否定文にしても生き残ることです。「彼は女々しくない」と言っても、女性的であることが劣るという含みは消えません。疑問文にしても、条件節に入れても、あるいは「たぶん」を付けても同じです。この振る舞いは投射と呼ばれ、断定した内容が否定で反転するのとは対照的に扱われます。つまりこの語を否定形で使って中立化することはできない。打ち消せるのは個別の評価だけで、目盛りそのものは残ります。「彼が弱いとは思わない」なら目盛りごと拒否できるのに、同じことをこの語ではできない。

発話行為としての働き方にも、ねじれがあります。表向きは面と向かった非難ですが、実際に効いている相手は、しばしば言われた本人ではありません。同席している第三者です。相手の面子を脅かす行為という枠組みで見ると、この語は名指された人物の面子を削ると同時に、その場にいる全員へ「ここではこの尺度が使える」と宣言している。だから言われた側が反論しても、宣言のほうは取り消されません。反論はむしろ、尺度の存在を認めた上での抗弁として処理される。会話のあと、場の空気だけが元に戻らないのはそのためです。

小説の中では、この性質がそのまま設計上の問題になります。会話文に置けば、それは発話した人物の価値観です。読者は語り手ではなく登場人物のほうを評価します。ところが地の文に置いた瞬間、判断の帰属先が作品そのものへ移る。三人称限定視点は、ここが特に危うい。「彼は自分の女々しさに嫌気がさした」という一文は、人物の自己評価としても、語り手の裁定としても読めます。どちらに読まれるかは前後の文脈次第で、書き手が思っているほど制御できていないことが多い。近い意味の未練がましい、煮え切らないといった言い方は、少なくともこの帰属の事故を起こしません。行動を記述しているだけで、序列を持ち込まないからです。

避けるべき語だと言い切るつもりはありません。人物の輪郭を一語で測れるという意味では、効率のよい道具です。ただし使うなら、条件をひとつ付けておくほうが安全です——聞いた誰かの反応を、必ず同じ場面の中に書くこと。眉が動いた、返事が遅れた、別の話題へ移した。それだけで、語は作品の判断ではなく作中の出来事に格下げされます。前提は否定では消せませんが、誰の前提なのかを場面で示すことはできる。処理の方法としては、それがほとんど唯一のものです。

文: hakadoru.ai 編集部

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