面白い

【おもしろい】形容詞

使い分けの視点

「面白い」は、滑稽さ、知的な関心、快い時間を一語で覆う広い評価語です。人物の台詞なら何に反応したかが性格を示しますが、地の文では読者の判断を先取りします。「痛快な」「笑いを誘う」など評価軸を絞るか、身体の反応を添えて意味を具体化します。

同義語

同品詞の類義語

興味深い
愉快な
痛快な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

心惹かれる
腹を抱えるcolloquial
目を奪う

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

ジェットコースターのようなcolloquial
手品を見ているような
時間を忘れるほどの

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

大いに
興味津々に
楽しげに

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

魅了する
笑いを誘う
引き込まれる

体言的言い換え

用言を体言に変換

妙味文芸的
醍醐味
笑いどころcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

抜群に愉快な
笑い転げるほどのcolloquial
底抜けに楽しいcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

興をそそる

例文: 密室の床に一粒だけ落ちた砂が、探偵の興をそそる。

詰まらない話と、明るくなる顔

「つまらない」は「詰まる」の否定形から来たと説明されます。詰まるとは、ふさがること、行き着くこと、決着がつくこと。落ちのつかない話、腑に落ちない説明、収まりどころのない時間が、詰まらない。退屈を表すこの語は、抽象的な評価語に見えて、実際には物が通って行き止まりに達するという具体的な像を土台にしています。同じことが、その対極に置かれる語にも当てはまります。

こちらも、もとは目に見える事態を言っていました。おもは顔、あるいは目の前。しろしは白いという色よりも、明るい、はっきりしているという明度の語です。両者を合わせれば、目の前がぱっと明るくなる状態になる。語源には諸説ありますが、この組み合わせで説明されることが多い。古い用例では、笑いよりも景色の見事さや音楽の心地よさ、場の快さを言うのに使われました。滑稽さは、後から入ってきた成分です。白という字に引きずられて色の話だと思うと、この語構成は理解しにくくなります。明白、白日、白む——いずれも色ではなく明るさの側にある。和語のしろしも同じ地面に立っていました。

意味の移り変わりを追うと、この語は覆う範囲を広げていきました。快さから、興味を引くことへ。さらに近代以降は、笑いを誘うという用法が前面に出てきます。現在では一語のまま、滑稽と、知的な関心と、単純な快さの三つを跨いでいる。英語で言えば funny と interesting と amusing に分かれる領域を、日本語は一語で運んでいることになります。だから読者に「面白かった」と言われても、書き手には情報がほとんど渡らない。三つのどれを指しているかが、語の側では区別されていないからです。感想を集める側にとっては、これはかなり厄介な性質です。同じ四文字が、笑い転げた読者からも、構成に感心した読者からも、ただ時間を心地よく過ごした読者からも返ってくる。語の広さは、伝達の効率を下げます。

語源が透けなくなることを、語の摩耗と呼びます。現代の話し手が使うとき、顔のことも明るさのことも意識されていません。ただ、原義と現在の用法は矛盾していない。批評の場で作品を褒めるとき、あるいは他人の話に引き込まれたとき、実際に起きているのは顔の変化です。眉が上がり、目が開き、体がわずかに前へ出る。語が指し示していた身体の反応は消えておらず、語のほうだけが抽象の側へ移った。原義は死んだのではなく、目に見えないところで裏書きを続けています。摩耗した語がすべてこうなるわけではありません。原義と現在の用法が完全にすれ違い、由来を知ると違和感だけが残る語もある。この語が例外に見えるのは、指していた身体現象が今も同じ形で起きているからです。人間の顔が変わらなかったので、語も裏切られずに済みました。

書く側にとっての含みは二つあります。ひとつは、人物にこの形容詞を言わせるとき、三つのどの層を指しているかで人物像が変わること。事件を滑稽と見る人物と、興味深いと見る人物は、同じ台詞でも別人です。もうひとつは、地の文で使うと評価語になり、読者の判断を先取りしてしまうこと。そこで原義へ戻すという手がある。顔の明るさ、前に出た上体、途中で止まった手——観察を書けば、読者は自分で判定します。評価を渡すか、材料を渡すか。語源は、その分岐にどんな材料があるかを教えてくれます。

文: hakadoru.ai 編集部

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