白い

【しろい】形容詞

使い分けの視点

物の色なら「真っ白な」「純白の」、血色の喪失なら「色がない」、情報や記憶の欠落なら「頭の中が真っ白になる」と焦点を分けます。明け方の推移には副詞、硬質な肌や器物には比喩が向きます。何が満たされていない白さなのかを定めるのが要点です。

同義語

同品詞の類義語

真っ白な
純白の文芸的
雪白の文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

色がない
血の気のない
頭の中が真っ白になるcolloquial

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

雪のような
牛乳のような
陶磁のような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

白々と文芸的
ほの白く文芸的
淡く

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

白く染まる
白さを帯びる文芸的
色を失う文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

純白文芸的
乳白色
雪色文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

透き通るような
骨のような文芸的
冴え渡る文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

空白エッセイ関連

例文: 犯行時刻の一行だけが空白で、探偵は記録係を呼び戻した。

色ではなく不在を訳す——blank と pale のあいだで

「頭の中が真っ白になった」を英語にするとき、色名を使った訳は選ばれません。多くの場合 blank が来ます。空白、記入のない状態。日本語の側が色として言っているものを、英語の側は情報の不在として言い直す。この一点だけでも、対応表の作りかたが違うことがわかります。顔色の場合も同様で、血の気の引いた顔は pale であって、色名を当てると別のことを指してしまう。肌の色合いを褒める文脈なら fair が使われることもある。日本語の一語が、少なくとも四つの英単語に散っていく——対応表は一対一では書けません。

散りかたには筋があります。英語の側は、明るさ、彩度の欠如、情報の欠如、皮膚の色調を、それぞれ別の語に割り当てている。日本語の側は、それらを一語で束ね、束ねたまま比喩に転用してきた。どちらが精密かという話ではありません。分節の位置が違うだけです。ただし翻訳の実務では、この違いが労力として現れます。日本語から英語へ訳すとき、訳者は原文が四つのうちどれを指しているかを毎回判定しなければならない。逆方向では、四語をどう塗り分けるかの情報が失われる。訳文の平板さは、こういう非対称の蓄積として生じます。

色彩語の分節については、言語間に階層があるという研究がよく知られています。基本的な色名の少ない言語から順に見ていくと、まず明暗にあたる二語があり、次に赤が加わり、そこから緑や黄が分かれていく、という順序が提案されました。細部には議論があるものの、明暗の対が最初に来るという点は多くの言語で支持されています。日本語についても、古い層では四つの語が基本的な色を担っていたとする説明があり、それぞれが単なる色相ではなく、明るい、暗い、はっきりしている、ぼんやりしている、といった状態を指していたと考えられています。この説に立つなら、色名が情報の不在を表せるのは転用ではなく、もともとの職掌に近いことになります。

他の言語も見ておきます。中国語では、同じ字が副詞として「むだに」の意味で働き、行っても無駄足だった、費用が無駄になった、といった言い方を作ります。フランス語には、眠れずに過ごした夜を白い夜と呼ぶ言い方がある。方向はそろっています。何かで満たされるべきものが満たされなかった状態を、この色が引き受けている。色は物質の属性であるはずなのに、複数の言語系統で欠如の記号として使われる——おそらく紙や布という媒体を共有した文明の側の事情でしょう。書かれていない紙、染められていない布、雪に覆われて地形の見えない野。いずれも、本来そこにあるべき情報が読み取れない状態です。読み取れなさを言うのに色名を使う習慣は、記録の技術と一緒に育ってきたと考えると筋が通ります。

だから訳しにくさの所在は、色そのものではなく、その色が何の不在を指しているかの部分にあります。創作の側から見ると、これは使いどころの目安になります。単に視覚を書きたい場面なら、この形容詞は情報量が乏しい。何かが失われた、あるいは記入されるべきものが記入されていない場面でこそ、この語は他の色名にできない働きをします。日本語で書く利点は、色と欠如を切り替えずに一語で言えることにある。切り替えないまま置いて、どちらとも取れる状態で読者に渡す書き方は、この語にしか許されていません。

文: hakadoru.ai 編集部

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