明瞭

【めいりょう】形容動詞

使い分けの視点

「明瞭」は声・像・記憶など、知覚された輪郭が保たれていることに焦点があります。「判然とした」は識別、「筋道の通った」は論理、「解像度」は細部の分離に向きます。制度や通信で育った硬さがあるため、職業人の報告や証言に置くと声色まで表せます。

同義語

同品詞の類義語

はっきりした
くっきりしたcolloquial
判然とした文芸的
歴然とした文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

一点の曇りもない文芸的
輪郭の立った文芸的
筋道の通った

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

澄んだ水のような文芸的
切り出したような文芸的
彫刻刀で削いだような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

ありありと
くっきりと
はきはきとcolloquial

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

際立つ
浮かび上がる

体言的言い換え

用言を体言に変換

鮮度
解像度colloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

疑いの余地がない文芸的
誰の目にも分かるcolloquial
言葉を選ぶまでもなく文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

不明瞭エッセイ関連

例文: 不明瞭な無線に、管制官は一語ずつ復唱を求めた。

回線の向こうで音節を数える——制度が育てた語

送話器に向かって、意味を持たない音節をひとつずつ読み上げる。受け手はそれを書き取る。合っていた割合を数える——通信や音響の分野には、そうやって音声の伝わりやすさを数値に変える試験があります。無意味な音節を使うのは、意味が助けてしまうからです。文になっていれば、半分聞こえなくても残りから復元できる。だから音節単位の聞き取り率と、文としての通じやすさは、別の指標として扱われることがあります。測られているのは話し手の誠実さでも語彙の豊かさでもなく、ただ輪郭が保たれたかどうかだけです。伝達を数字にしようとした瞬間、伝わりやすさは人格から切り離され、設備の性質になりました。この切り離しが可能になったのは、そう古い話ではありません。

この語が日本語の中で流通量を得た場所も、似た性格を持っていたと考えられます。明治以降に整備された官庁の文書、軍隊の号令、鉄道の信号、電信の符号——伝達の失敗がそのまま事故や損害に直結する領域が、近代には一斉に生まれました。そこでは、言葉が届いたかどうかを事後に検証できなければならない。規則書や訓令は「明瞭に記載すること」といった条項を抱え込みます。日常会話より先に、制度の文章の側で居場所を確保した漢語は少なくありません。硬い語彙の多くは、雑談ではなく手続きの中で育ちました。

現代の口語での扱いを見ると、偏りがはっきりします。会話で「はっきり言ってほしい」とは言っても、同じ意味で漢語を選ぶ人はまれです。ところが否定形のほうは日常の側にも降りてきていて、領収書の但し書きにも、議事録の講評にも、写真の説明にも現れる。制度が必要とするのは、正常な状態を褒める言葉ではなく、逸脱を名指す言葉だからでしょう。規格や監査の文章では、肯定形は要求として、否定形は指摘として使われます。使用頻度が偏るのは、そこに実務があるからです。

そう考えると、こうした要求を書き込んだ条項は、たいてい一度の失敗のあとに置かれた標のようなものです。誰かが読み取れず、誰かが取り違え、そのあとで「読み取れるように書け」という一文が足される。医薬品の用量表記も、鉄道の指差喚呼も、航空無線の復唱も、同じ構造で厚みを増してきました。規定の分量は、その分野が経験した誤解の量にほぼ比例している。名前の残っていない伝達事故が、条文の一行ずつに沈んでいます。

創作の側から見ると、ここに使いどころがあります。登場人物にこの漢語を選ばせた瞬間、その人物が制度の言語を身につけていることが露呈する。軍人、官吏、技師、医師——職業が説明抜きで滲みます。逆に恋人どうしの会話へ置けば、情の場面に検証可能性が持ち込まれ、体温が一段下がる。記憶について「明瞭に覚えている」と書くとき、描かれているのは記憶の中身ではなく、記憶を証言として扱おうとする話者の姿勢です。同じ内容を「はっきり覚えている」と言えば、思い出しているのは本人のためになる。前者は誰かに提出するために思い出している。取調室と居間では、選ばれる語が違う。語が出自から持ち帰ってきたものは、意味ではなく文の温度として残ります。

文: hakadoru.ai 編集部

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