不明瞭

【ふめいりょう】形容動詞

使い分けの視点

「不明瞭」は声・映像・輪郭など、受け取る側の知覚がうまく届かない場面に向きます。「曖昧」が内容や判断の未確定へ寄るのに対し、「不鮮明」は像の質、「要領を得ない」は話の組立てを評価します。ぼかすなら照明や距離など原因を場面に置き、読者の仮説が複数残るよう設計します。

同義語

同品詞の類義語

はっきりしないcolloquial
ぼんやりしたcolloquial
おぼろな文芸的
不鮮明な

類義句

同品詞の慣用的言い換え

要領を得ない
歯切れの悪い
輪郭のぼやけた文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

霧の向こうのような文芸的
水滴越しに見たような文芸的
薄紙を挟んだような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

ぼんやりとcolloquial
もごもごとcolloquial
ぼそぼそとcolloquial

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

ぼやける
輪郭を失う文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

ぼやけcolloquial
霞み文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

つかみどころのない
輪郭が溶けた文芸的
判然としない文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

複数の予測エッセイ関連

例文: 彼女が手紙を燃やした理由には複数の予測が残り、どれも次章まで同じ強さを保った。

赤字の「ここ、わかりにくい」から始まる面倒

原稿の余白に赤い字で「ここ、わかりにくい」と書き込まれたとき、書き手が最初にする対処は、たいてい間違っています。指摘された段落に説明を足すのです。修飾語を増やし、省いていた主語を戻し、因果関係を接続詞で明示する。それで赤字は消えます。けれど消えたのは指摘であって、問題ではないことがある。読み手が足を止めたのは情報の欠落ではなく、焦点の置き方だったのかもしれない——そう疑い直すところから、この語をめぐる厄介が始まります。輪郭のぼやけた文章と、輪郭のぼやけた対象を書いた文章は、直し方がまるで違うからです。

語の側にも、その区別に対応する目盛りがあります。この三字が掛かる先を集めると、発音、輪郭、映像、記憶といった、受け取る側の知覚に属するものばかりが並ぶ。判断や約束にかかる「曖昧」とは、そこが違います。曖昧な返事は内容が定まっていないほうに読まれ、不明瞭な返事は、まず声が届かなかったほうに読まれる。しかも前者を測る手立てはありませんが、後者にはある。音声を扱う分野では、聞き手が正しく聞き取れた割合を明瞭度と呼んで数値で示します。受信の失敗として定義されているから、量として測れる。赤字の「わかりにくい」が厄介なのは、この二つを区別しないまま同じ一言で届くからです。

区別の入口として、制御されていない曖昧さと、制御されている曖昧さを分けてみます。霧の中に立つ人物の輪郭が見えない、と書く。このとき見えていないのは視点人物なのか、読者なのか。両者が一致していれば場面は成立しますが、書き手の頭の中では人物の顔がはっきり見えていて、文章の上でだけ見えていない、という状態がしばしば起きます。読者はその段差を、描写の不足として受け取る。同じ「見えない」でも、原因が場面の側にあるか筆の側にあるかで、読後の手触りは別物になります。

ここで引っかかります。制御された曖昧さという言い方は、あまりに都合がよい。うまくいった曖昧さを後から制御と呼び、失敗したものを不足と呼んでいるだけではないのか。実作の場面では、書いている本人にその区別がつかないことのほうが多いのです。判定の手がかりを探していくと、外から確かめられるものがひとつだけ残ります。その箇所を読んだあとで、読者が何かを予測するかどうか。制御されている曖昧さは、読者に仮説を立てさせる。制御されていない曖昧さは、読者の推測をどこにも向かわせないまま、次の段落へ押し流してしまう。

この基準を持って既存の型を見直すと、扱いに困るものが出てきます。「彼は何か言いかけて、口をつぐんだ」。教科書的な形で、読者は当然その先を予測します。ただし予測される内容が毎回ほぼ同じであるために、仮説が立った瞬間に興味のほうが終わる。すると条件はもう一段しぼれます。曖昧さが働くのは予測が生まれるときではなく、複数の予測が同じ強さで並び立つときだった。言いかけてやめる人物が、直前に二つの別々の事情を抱えていれば、同じ一文が息を吹き返します。文の書き方より前の、状況設計の側に鍵がある。

だから処方はひとつに絞れます。輪郭をぼかしたい場面では、ぼかす理由を場面の側に置く。照明が足りない、距離がある、聞き手が別のことに気を取られている、語り手の語彙がその対象に追いついていない——理由が本文のどこかに立っていれば、読者は不足ではなく状態として受け取ります。逆に理由を置かないまま輪郭だけ薄めた文章は、推敲のたびに説明が増え、最後には説明だけが残る。赤字への正しい応答は、足すことでも削ることでもなく、なぜここが見えないのかを一行、場面の側に書き足すことでした。

文: hakadoru.ai 編集部

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