よって

【よって】接続詞

使い分けの視点

「ゆえに」「したがって」は演繹的な因果で、前者は古風、後者は論説的です。「それゆえ」は照応先を明示し、「だから」は話者の感情を含む口語です。「そのため」「その結果」は原因と結果を説明し、「結論として」は議論の末尾を示します。「もって」「かるがゆえに」「なれば」は文語的な根拠や条件です。

同義語

同品詞の類義語

ゆえに文芸的
したがって文芸的
それゆえ文芸的
だからcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

そのため
結論として
その結果

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

もって文芸的
かるがゆえに文芸的
なれば文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

語の住所で話者を描くエッセイ関連

例文: 語の住所で話者を描くため、生徒会長には答案に似た硬い接続を語らせた。

答案と路地のあいだ——二重生活を送る接続詞

中学の数学で、多くの人がこの接続詞に初めて自分の手で触れます。三角形の合同を示す証明問題では、結論の直前の行に「よって」と書きます。日常の会話で一度も口にしたことのない語を、答案の上でだけは全員が自然に使います。教室の雑談でこの語を喋る生徒は一人もいないのに、証明を書く段になると迷いなく出てくる——最初から書き言葉専用として習得される、めずらしい語です。語形を割ってみると、拠りどころを意味する動詞の連用形に接続助詞が付いた組み立てが見えてきます。前に述べたことに拠って、という手続きそのものが、よ・っ・ての三拍に畳まれているわけです。

その後の付き合いも、硬い文書の側に偏ります。判決文には「よって、主文のとおり判決する」とあります。論文の結論部、公文書の決定通知、式典の表彰状にも、同じ語が並びます。同じ因果をつなぐ仲間のなかでも、「だから」は会話に住み、「したがって」は文章と改まった話し言葉にまたがり、この語はほぼ文章にしか住みません。同じ言語の内部に走る、場面と身分による語彙の断層を、言語学では位相と呼びます。試しに友人との雑談にこの語を混ぜてみれば、たちまち芝居がかって聞こえるはずです。断層は、踏み越えた瞬間にだけ姿を見せます。

ところが同じ語形が、正反対の生活も送っています。関西をはじめ西日本の話し言葉には、理由を表す接続助詞の「よって」があります。「雨降っとるよって、やめとき」と言います。こちらは文章語どころか、最もくだけた日常会話の語です。文語の「よりて」を共通の祖先として、中央の書き言葉に残って硬直した系統と、上方の話し言葉に溶けて柔らかくなった系統に分かれた、と見る説明が自然ですが、話し言葉の歴史は文書に残りにくく、細部の道筋は確かめきれません。確かなのは、現代の耳がこの二つを、ほとんど別の語として聞き分けていることです。同じ形が最も硬い位相と最も柔らかい位相の両端に立つ——この振れ幅の大きさで、この語は語彙の断層の見本のような存在になっています。

小説はこの断層を、人物造形の資源として使ってきました。地の文に置けば目立たないこの語も、台詞に置くと強い信号になります。「よって、本日の活動は中止とする」と告げる生徒会長は、その一語だけで規則の側の人間になります。ロボットや人工知能の発話にこの語が好んで与えられるのも、日常会話の位相を知らない話者、という記号として働くからでしょう。一方、「〜よって」と理由を結ぶ人物は、上方の、情の通った話し言葉の世界に属して見えます。同じ三拍が、正反対の人物を立ち上げるわけです。

語を選ぶとき、意味だけを見ていると位相を踏み外します。因果をつなぐ語はどれも意味はほぼ重なっていて、違うのは住所だけです。答案に住む語か、路地に住む語か、その中間のどこか。目盛りのどこから語を取ってきて誰に渡すかの精度が、会話文の実在感を静かに決めています。ふだん規則の側の言葉で話す人物が、一度だけ「だから」と言う。位相の断層を一段だけ越えるその一歩は、ときに告白より雄弁です。

文: hakadoru.ai 編集部

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