「電車が止まった。それで遅刻した」なら、前件を理由として後件へつなぎます。ところが相手の長い説明の途中で「それで?」と返せば、原因を述べるのでなく、結論や続きを催促しています。語彙の形は同じでも、文の位置、抑揚、発話順によって行う仕事が違います。語用論では、接続される命題だけでなく、その一言が相手へ何を求めたかを見ます。
疑問形の短さは、「話の要点は何か」「次に何が起きたか」を明示せず、文脈から選ばせます。共有された話題が自然さを支えます。
因果用法でも、客観的な原因を証明するとは限りません。「雨だった。それで彼は不機嫌だった」と話者が結べば、雨を理由と解釈しているだけかもしれません。本人は別の事情を抱えている可能性があります。接続詞は世界の因果ではなく、話者が提示する因果の標識です。小説で視点人物の推測として使えば、その後の誤解や修正につなげられます。
地の文で無標に置けば作者の説明として読まれやすく、一人称の台詞なら主観性が前へ出ます。発話主体の位置が信頼度を変えます。
「それで、どうしたの」は相手へ続きを譲り、「それでいい」は現状を承認し、「それで終わり?」は不足を責めます。同じ「それ」が受ける内容でも、後続表現が発話行為を変えます。特に単独の「それで」は、関心のある促しにも、苛立った要約要求にもなります。視線を向けて待つのか、作業を続けながら言うのかで対人姿勢が変わります。
文章では動作を一つ添えるだけで、同じ二文字の温度を変えられます。副詞で感情を説明しすぎず、応答の間を使います。
丁寧さの面では、「それでどうなりましたか」と文を完成させれば、単独の「それで?」より要求が明示され、圧力を調整できます。しかし長い形でも、相手の苦痛を無視して結末だけ求めれば配慮とは言えません。敬語形式と会話目的は別のものです。何を聞く権利があり、相手が答えたくない可能性を認めるかが、実際の対人配慮を決めます。
会話の順番を奪う働きにも注意が要ります。相手が詳細を語りたいのに「それで?」と急かせば、発話者が重要度を決めています。逆に、話が途切れた人へ穏やかに続きを促すなら支援になります。催促という同じ機能が、権力関係と状況によって圧力にも助けにもなるのです。
返された側が要点を言う、反発する、黙るという反応で、促しがどう受け取られたかを示せます。発話行為は応答まで含む共同作業です。
聞き手が沈黙を許さず再度「それで」と迫れば、最初は穏やかだった促しが尋問へ変わります。同じ語の反復回数と間隔が、力関係を累積させます。語彙だけでなく、会話履歴が発話行為の強度を作ります。
創作で繰り返すと、人物の聞き方が見えます。因果を急ぐ人物は詳細を切り、物語を楽しむ人物は「それから?」と経過を求めるかもしれません。「それで」を削っても前後の因果が明白なら、接続を読者へ委ねられます。残すなら、話者が関係を確定したという情報を生かします。
理由を示す接続と、理由を要求する催促。その二つは、前の発話を受けて次の一手を決める点でつながっています。誰が次を選ぶかが、この語の会話上の力です。