魔法

【まほう】名詞

使い分けの視点

世界内の技術なら「呪術」「幻術」「秘術」で系統を分け、「魔法」は広い総称として使えます。「呪文を唱える」は発話が作用を起こす場面に向きます。誰が使えるか、必要な手続き、失敗条件を置けば、不思議な力にも物語上の説得力が生まれます。

同義語

同品詞の類義語

呪術文芸的
秘術文芸的
妖術文芸的
幻術文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

超自然の力
目に見えぬ技文芸的
不思議の手わざ文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

煙を吐く杖のような文芸的
闇を切り裂く呪文のような文芸的
石を黄金に変えるような文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

呪文を唱える
術を施す文芸的
奇しき力をふるう文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

理を超えた技文芸的
夢のような業
闇夜にともる秘術文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

遂行する言葉エッセイ関連

例文: 王が遂行する言葉を告げた瞬間、無名だった船に旗が掲げられた。

言うことが起こることであるような文——呪文と進水式の共通点

進水式で、船に名前がつく瞬間を考えてみます。「この船を何々と名づける」と発話されたとき、その文は船の状態を報告しているのではありません。言うことが、そのまま名づけるという行為になっている。オースティンはこの種の文を、事実を記述する文から区別して扱いました。約束する、宣言する、任命する、判決を言い渡す。いずれも、真か偽かを問うことに意味がなく、代わりに、うまくいったかどうかを問うことになる文です。世界を写しとる言葉ではなく、世界を動かす言葉として働いている。

呪文の構造は、これとほとんど同じ形をしています。唱えれば扉が開き、名を呼べば火が立つ。異なるのは、動く対象が制度ではなく物理であるという一点だけです。作中の魔法とは、言語が世界を改変できる範囲を、社会的な事実の外側まで押し広げたものだと言い換えられます。ここで注意しておきたいのは、現実の側の遂行的な文が効くのは、それを支える制度があるからだという点です。命名式が有効なのは、命名する権限を持った人物が、定められた場で、定められた手続きに従って発話したときに限られる。通りすがりの人間が同じ文を口にしても、何も起きません。

この条件は、魔法の体系を設計する作業と正確に対応します。誰が唱えられるのか、何を代償として支払うのか、手続きを踏み外したときに何が起きるのか。読者が納得する体系とは、条件が明示され、条件を満たさないときにはきちんと失敗する体系です。オースティンは、こうした前提が崩れたときの発話の不具合を細かく分類しましたが、その分類はそのまま、魔法が失敗する型の一覧として読めます。権限のない者が唱えた場合、手続きの途中で中断した場合、形式は整っているが唱えた本人にその気がない場合。三つ目は特に厄介で、形式的には成立しているのに空虚である、という状態を作ります。

日常語のほうへ戻ると、この語はまた別の働きをします。ある技術を目にして「魔法みたいですね」と述べるとき、話し手は仕組みの説明を放棄しています。しかもそれを、相手を立てる形で行っている。言葉の表面は称賛で、伝わる中身は理解の断念です。この二重性のおかげで、褒め言葉として安全に流通する。ただし、実装した本人に向けて使うと、事情が変わることがあります。積み上げた設計を一言で黒い箱に押し込めてしまう響きが混じるからで、同じ語が、称賛にも軽視にも振れる。文脈よりも、話し手と聞き手の位置関係が意味を決めている例です。

そして作中で誰にこの語を言わせるかは、それだけで視点の位置を漏らします。魔法が日常である世界に生まれ育った人物は、自分の使う技術をわざわざそう呼びません。私たちが照明をつけるとき、電気の力だと言い添えないのと同じです。この語が発せられるのは、外から来た者が見たとき、あるいは内側の者が改めて距離を取ったときに限られる。つまり、名づけの語であると同時に、名づける者の立ち位置を示す標識でもある。船に名前をつける文がそうであったように、この語もまた、口にした瞬間に話し手の資格を露わにします。

文: hakadoru.ai 編集部

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