滅法

【めっぽう】副詞

使い分けの視点

「滅法」は程度を強く押し上げる口語で、促音と破裂音が語り手の声を前へ出します。「ことのほか」は落ち着いた意外性、「格段に」は比較、「やたらと」は過剰へのうんざりを含みます。中立的な報告より、講談調の地の文や人物の生きた会話に向きます。

同義語

同品詞の類義語

ことのほか文芸的
とびきりcolloquial
格段に
けたはずれにcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

並ならず文芸的
群を抜いて
他の追随を許さず文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

やたらとcolloquial
むやみにcolloquial
底抜けにcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

滅法うまいエッセイ関連

例文: 峠の茶屋の団子は滅法うまい、と旅人は膝を打った。

唇を閉じてから開くまでの一拍

唇をいったん閉じ、息を溜め、勢いよく開く。四拍のうち二拍目には音がなく、そこで圧力だけが高まっている。促音とは無音の一拍ですが、無音というより、次の音を撃ち出すための助走です。日本語の音韻は基本的に子音一つと母音一つで一拍を作りますが、この語はその規則の外側に、音のない一拍と、破裂する一拍を並べて置いている。声に出すと、意味を理解する前に強度が伝わる。

その強度の正体は、日本語における p 音の希少さにあります。ハ行の子音は古い時代には p に近い音だったという説が有力で、時代を下るにつれて摩擦音を経由し、現在の h へ移ったと考えられています。語中のハ行はさらに w へ転じました。結果として現代語では、語頭にも語中にも p はほとんど残っていません。残ったのは、促音や撥音のすぐあとという特定の環境だけです。つまりこの語の p は、前にある促音があってはじめて姿を現す音であって、両者は切り離せません。

そこに分布の偏りが重なります。促音のあとに p が来る語を集めると、程度や様態を表す副詞とオノマトペに集中していることに気づきます。きっぱり、さっぱり、たっぷり、ちょっぴり——動詞や名詞よりも、修飾する側の語彙に偏っている。音素配列上まれな型が、意味の上では「強調」という限られた役目に寄っているわけです。因果の向きを断定はできません。強く言いたいから珍しい音を選ぶのか、珍しい音だから強く聞こえるのか、どちらとも取れます。ただ、この型を持つ語が中立的な事実の記述にはあまり使われないことは確かです。法令や仕様書の本文にこの音型の副詞はまず現れません。書き言葉の中でも、話し声を写した部分にだけ集まる。音の希少性と、文体の格式は、どうやら連動しています。

意味の側の来歴は、音とは別の道を通ってきました。この語は仏教の術語に由来するとされ、もともとは程度を表す副詞ではありませんでした。宗教語彙から俗語へ移る過程で、原義はほぼ落ちている。しかし音の派手さは落ちなかった。むしろ、原義を知らない話し手にとって残るのは音だけであり、その音が強度を約束したからこそ、程度副詞として生き延びたとも考えられます。意味が抜けた器に、語感が残って中身の代わりをした。似た経路をたどった語は他にもあり、宗教や漢籍から来た硬い熟語が、意味を薄めながら口語の強調表現に転じる例は珍しくありません。硬い語ほど、俗に落ちたときの落差が効きます。

書く側にとっては、この語は語り手の声色を一息で決めてしまう道具です。落語や講談の口調、下町の会話、活気のある地の文には馴染み、報告書や論文調の文には決して乗らない。三人称の中立を保ちたい原稿の地の文に一度置くと、その瞬間から地の文が「誰かによって語られている」ものに変わります。それが狙いなら強力で、そうでなければ視点の設計が崩れる。四拍の中に無音を挟むというだけの音の構造が、文章全体の話者の位置まで動かしてしまいます。

文: hakadoru.ai 編集部

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