頼もしい

【たのもしい】形容詞

使い分けの視点

「頼もしい」は、対象の外見より、見る側が期待への応答を信じられるという評価を表します。心強さは自分の不安を含み、剛健さは身体や気質へ、支柱の比喩は集団内の役割へ寄ります。台詞では拍と響きも確かめ、場面に合う褒め方を選びます。

同義語

同品詞の類義語

心強い
力強い
剛健な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

肝が据わった
背中を預けられる
一目置かれる

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

大樹のような文芸的
岩壁のような文芸的
盾のような

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

堂々と
泰然と文芸的
悠然と文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

安心させる
信頼に足る文芸的
見込みがあるcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

大黒柱
支柱文芸的
剛の者文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

百人力のcolloquial
鬼に金棒colloquial
無敵のcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

力の抜けた賛辞エッセイ関連

例文: 力の抜けた賛辞に、新兵は張っていた肩をようやく下ろした。

濁らない五拍——褒め言葉が口の中で作る形

た、の、も、し、い。五拍。声に出してみると、濁る音が一つもないことに気づきます。母音の並びは a-o-o-i-i で、中ほどにオ段が二つ続き、そこから細いイ段へ抜ける。同じ意味圏にある「心強い」は六拍で、途中に「づ」の濁りが入ります。「力強い」も同様に濁る。「剛健」に至っては漢語で、二拍ずつの塊が長音と撥音で締められ、和語のなだらかさとはまったく別の作りをしています。褒め言葉としてほぼ交換できるこれらの語が、音の作りではまるで揃っていない。

子音の並びも見ておきます。五拍に現れる子音は、タ行、ナ行、マ行、サ行の四つ——同じ行が二度は出てきません。しかも真ん中の二つは鼻音です。息が鼻へ抜ける拍が語の中央に並ぶので、途中でいったん音がやわらぐ。比較のために「心強い」を割ると、こ・こ・ろ・づ・よ・いで、カ行が二度続きます。同じ行の反復は音を転がし、語に勢いをつける働きをする。特殊拍の有無も揃いません。こちらの五拍は、促音も撥音も長音も一つとして含まず、すべてが子音と母音の組でできています。剛健のほうはご・う・け・んで、四拍のうち二拍までが特殊拍です。伸ばす拍と詰まる拍が半分を占める語と、一つも持たない語とでは、口の中で起きていることが根本的に違う。

語尾の「〜もしい」は現代語では数が少なく、思いつくのは「好もしい」くらいです。古語の「頼もし」はシク活用の形容詞で、この類は話し手の評価や心情を表すものが多かったとされます。喜ばしい、望ましい、好ましい——今も残る「〜しい」の群れは、対象の外形ではなく判断を運びます。頼もしいは相手の性質を測っているようでいて、実際に述べているのは測る側の安心です。だから同じ人物を見ても、追い詰められている者と余裕のある者とでは、この語が出るかどうかが変わる。音の話に入る前から、この語は主観の側に立っている。

音の細部を見ると、重心はオ段の二拍が続くところにあります。「の」も「も」も口の開きがほとんど変わらないので、二拍のあいだ姿勢が保たれる。厚みを一度作ってから、シとイで細く抜ける。対して「心強い」は、コ・コ・ロで三拍を助走したあと「づよい」で急に力むので、途中に段差ができます。褒めながらこちらも力むのが「心強い」で、褒めて力を抜くのが「頼もしい」。前者は自分の不安を認めた上での評価で、後者は評価だけを差し出す。同義語の選択は、しばしばこの程度の差で決まっています。

活用させると、この形は保たれません。末尾だけが入れ替わるうちは穏やかです。連用形の「頼もしく」も、名詞にした「頼もしさ」も五拍のままで、最後の一拍がク音やサ行に置き換わるだけ。ところが過去にすると、た・の・も・し・か・っ・たの七拍になり、途中に促音が割り込みます。清音だけで滑らかに抜けていた語に、息の止まる場所が一箇所できる。二拍増えたことよりも、詰まる拍が一つ入ったことのほうが手触りに効きます。褒め言葉として働いているのは終止形の五拍のほうで、地の文で過去形に倒した瞬間、売りだった滑らかさは半分ほど落ちる。台詞として置くか、地の文で報告するかという判断は、意味の問題である前に、どの活用形の音を読者へ渡すかという問題です。

とはいえ、音が意味を決めるとは言えません。「乏しい」も清音ばかりで同じ語尾を持ちますが、印象は反対です。「恐ろしい」に至っては、同じオ段の連続を抱えている。同じ語根から出た「頼りない」も、た・よ・り・な・いの五拍で、濁点は一つも付きません。条件をこれだけ共有していながら、評価はまっすぐ逆を向く。音象徴で語の性格を説明するのは順序が逆で、意味が先に決まったあとの手触りにだけ、音は効く。そして効く場面は限られていて、それは同義の候補が複数残って決めかねているときです。意味で選べる場面では音は関係なく、意味で選べなくなったとき初めて音が判定を引き受ける。

台詞で試すのが早い。「頼もしいな」は六拍で言い切れて、そのまま着地します。「心強いな」は七拍で、語尾がわずかに重い。地の文なら差は消えますが、声に出される台詞では拍が効きます。前後の文が長く続いたあとで短く締めたい位置なら前者、間を作りたいなら後者。意味の違いではなく呼吸の違いで選ぶ場面は、類義語をめぐる判断のなかでいちばん頻度が高い。原稿を読み上げて迷ったら、そこは音で決めていい。決めた理由が説明できなくても、読者の耳は同じところで同じように反応します。

文: hakadoru.ai 編集部

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