ただし
【ただし】接続詞使い分けの視点
「ただし」は前言を打ち消さず、適用範囲だけを削る留保です。補足のなお、対立のしかしと混ぜず、まず有効な原則を置いてから例外を刻みます。後件が重要であるほど、小さな但し書きへ重心が移る仕掛けも使えます。許可、契約、規則を語る人物の立場まで見える接続詞です。
同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
「ただし」は前言を打ち消さず、適用範囲だけを削る留保です。補足のなお、対立のしかしと混ぜず、まず有効な原則を置いてから例外を刻みます。後件が重要であるほど、小さな但し書きへ重心が移る仕掛けも使えます。許可、契約、規則を語る人物の立場まで見える接続詞です。
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。
例文: 適用範囲を赤線で囲むと、無料の許可証は橋の手前でだけ有効だと分かった。
例文: 但し書きは契約書の最終頁にあった。城を譲る、地下の井戸を除く、と小さな字で記されている。
法律の条文には、原則を述べた本文のあとに、例外を刻む一文が付くことがあります。但し書きと呼ばれる部分です。この限りでない、という決まり文句を末尾に従えた条文を、法令の中に見つけるのは難しくありません。原則を先に立て、例外をあとから刻む二段構えは法令文の基本装備で、契約書や利用規約、駅の掲示にまで同じ骨格が流れ込んでいます。何かを約束する文章は、ほとんど必ずこの語の出番を用意している。原則と例外の分業は、それほど文書の世界に行き渡っています。
語用論の目で見ると、この語の仕事は独特です。しかし や ところが は、前の文と張り合い、時にはそれを打ち消します。ただし は違う。前の文の効力を保ったまま、適用の範囲だけを削るのです。入場は無料です、ただし予約が要ります、と言われたとき、無料であることは少しも取り消されていません。主張の本体は生きていて、輪郭だけが彫り直される。前言が生きているという含みこそが、この接続詞の署名です。
ところが実際の運用では、情報の重みがしばしば逆転します。聞き手は経験から、この語のあとにこそ効いてくる情報が来ることを学習している。広告の隅の小さな活字が但し書きであることを、読み手は知りすぎるほど知っています。原則は気前がよく、例外が財布に触る。だから読み手の注意は、原則よりも留保のほうへ引き寄せられる。文の形式上は従属的な位置に、実質上の重心が宿るわけです。この捻れは書き手の道具になります。さりげなく見せたい重要情報を留保の位置に置く、という技法が成立するのはこのためです。
実務の文書では、隣の席の語との分担も決まっています。補足を付け足すときは なお、例外を刻むときは ただし、と書き分けるのが公用文の慣行です。この分担が乱れた文書は読み手を混乱させます。なお、で始まった一文が実は重大な例外だったとき、読み手は原則の効力を測り直さなければならない。接続詞は文の飾りではなく、後続の情報をどの棚に収めるべきかを先に予告するラベルであり——ラベルの貼り間違いは、棚ごとの信用の崩壊を招くのです。
会話に持ち込むと、この語は人物を描き始めます。日常の話し言葉でこれを使う人は多くありません。使えば、発話が一瞬、条文の匂いをまといます。手伝ってもいい、ただし今日だけだ、と言う人物は、好意に条件の枠を嵌め、関係をどこか契約として扱っている。教師が、上司が、あるいは取引を持ちかける悪役が使えば様になり、恋人への返事に使われれば、その距離感自体がひとつの描写になる。丁寧さの理論で言えば、条件を明示することで自分と相手の双方の領分を線引きする振る舞いで、親密さとは別の原理で動く話し方です。原則と例外、公式と本音——一語の接続詞が、文にこの二層構造を持ち込みます。例外の層に置いたものは、小さく見えて、長く残る。但し書きの活字が小さいのは、内容まで小さいからではありません。
文: hakadoru.ai 編集部
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