特に

【とくに】接続詞

使い分けの視点

どの語も集合から一つを取り立てますが、「とりわけ」「ひときわ」は差の大きさ、「なかでも」は列挙済みの集団、「なかんずく」は硬い論述調を強めます。「特に」は比較対象が読者に見えて初めて働くため、単独で置かず、何の中から選んだかを直前か同じ文に示します。

同義語

同品詞の類義語

殊に文芸的
とりわけ文芸的
なかでも
とくにcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

ことのほか文芸的
中でも特筆すべきは文芸的
わけても文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ひときわ文芸的
なかんずく文芸的
とりわけて言えば

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

比較の集合エッセイ関連

例文: 三つの村を巡ったあとで比較の集合が整い、旅人は海辺の村を選んだ。

削っても通じる語をなぜ残すのか——焦点副詞の使いどころ

原稿を印刷して赤を入れていくと、真っ先に消える語には偏りがあります。接続詞、指示語、そして程度や焦点を示す副詞。このあたりが最初に落ちる。落としても文の意味はほとんど変わらず、むしろ文が引き締まって見えます。削って通じるなら要らなかったのだ、と言い切ってしまえば話は早いのですが、実際にはそう単純ではありません。落としてよい場合と、落とすと文の骨が一本抜ける場合とがある。その境目がどこにあるかは、この種の語が文の中で何をしているのかを見ないと決められません。

仕事は、焦点を当てることです。複数のものが並んでいる場面で、その中の一つを持ち上げる。ということは、機能するためには「並んでいるもの」が読者の頭に先にできていなければならない。ここが要点です。三人の生徒を描写した直後に一人を持ち上げるなら、焦点は正しく落ちます。けれど、まだ何も並んでいない場所にいきなり置かれると、読者は存在しない比較対象を探しに行く。「彼は特に無口だった」——この一文だけを読んだ人は、無意識に「誰と比べて」を探します。探して見つからなければ、その空振りは文章への小さな不信として残ります。焦点を絞る語は、絞られる前の集合を要求する語なのです。

自分の原稿でそれを見分ける方法があります。同じ位置に「なかでも」を入れてみる。この語は中という字を抱えていて、先行する集合を文字どおり受けますから、集合が書かれていなければ置いた瞬間に文が壊れます。壊れたなら、比較の枠を書き忘れていたということです。「とりわけ」「ことに」も似た働きをしますが、文語寄りの格を持っているぶん、地の文の調子まで動かしてしまう。診断の道具としては「なかでも」がいちばん素直でしょう。焦点を絞る副詞のうち、ここで扱っている一語だけが、集合を暗黙のまま済ませることを許してくれる。許してくれるからこそ、書き手は集合を書かずに置けてしまう。使い勝手のよさと事故の起きやすさは、同じ性質の裏表になっています。

地の文で使うときには、もうひとつ、語り手の位置が露出するという問題があります。焦点を当てるという行為は、誰かがその選別をしたということですから、選別した主体が文の外に立ち現れる。一人称の語りや、語り手の批評が許される三人称なら問題ありません。しかし視点人物に密着した書き方をしている場面で不用意に置くと、そこだけ語り手が一段高いところから解説を始めたように読めます。カメラが急に引く。密着を売りにしている場面ほど、この段差は目立ちます。

置く位置によっても、焦点の届く範囲は変わります。文の頭に置けば、その一文まるごとが前の文脈から持ち上げられる。述語の直前に置けば、持ち上がるのは述語の内容だけです。前者は段落の中の一文を選び、後者は文の中の一語を選ぶ。同じ語で、選別の粒度が二段階ちがう。粗いほうを選ぶと、たいてい語り手の声が濃くなります。配分の問題も付いてきます。焦点は希少性に依存する資源で、一つの場面で二度使えば二度目は効かず、三度使えばその章の焦点はどこにもなくなる。原稿を検索にかけて、章あたり何度使ったかを数えてみる。地味な作業ですが、自分の癖を知るには早い方法です。強調の語は、書いている最中には毎回それが必要に思えるので、書き終えたあとに一覧にしないと過剰に気づけません。

会話文では事情が変わり、否定と組んだときに独自の働きをします。「特にない」「特に何も」——これらは、何もないことを言っているのではなく、取り立てて報告するほどのものはない、という取捨の判断を報告しています。話し手は一度中身を検討して、そのうえで出さないことを選んでいる。だから隠し事のある人物にも、疲れて話す気のない人物にも使える。何かがあったのか、なかったのか、あったが言わないのか。三つの可能性を同時に立てたまま会話を先へ送れる、短い便利な札です。地の文の用法では集合が先に要るのに、この用法では集合が話し手の頭の中にあれば足りる。読者はその中身を見せてもらえません。同じ語が、書かれた集合を要求する側と、書かれない集合を隠す側の両方に立っているわけです。

判断の基準はひとつに絞れます。その語を消したときに、読者が「並んでいるもののどれか」を見失うなら残す。見失わないなら消す。原稿を通しで読み直すとき、この語に当たるたびに比較対象が本文のどこに書かれているかを指で押さえてみる。押さえる場所がない箇所は、たいてい書き手が自分の頭の中にあった比較を、書かずに済ませてしまった跡です。

文: hakadoru.ai 編集部

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