とりわけ

【とりわけ】接続詞

使い分けの視点

「特に」は対象を単純に焦点化し、「なかでも」「中でも」は示された集合から選びます。「殊に」「わけても」「なかんずく」は文語寄りで、最後の語ほど硬質です。「ことのほか」は予想以上、「ひときわ」は周囲から目立つ様子、「なんといっても」は決め手の強調に向きます。

同義語

同品詞の類義語

殊に文芸的
なかんずく文芸的
特に
なかでも

類義句

同品詞の慣用的言い換え

ことのほか文芸的
中でも
わけても文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ひときわ文芸的
他に類を見ぬほど文芸的
なんといってもcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

母集合を先に置くエッセイ関連

例文: 語り手は町の職人全員の腕を認める母集合を先に置き、その後で若い硝子工を事件の鍵として選んだ。

選ばれなかった側エッセイ関連

例文: 優勝者へ光を当てた記者は、選ばれなかった側の努力まで否定しないよう全選手の記録を併記した。

一人を名指すとき、残りに何が起きるか

披露宴のスピーチを想像してください。新婦の上司が立ち、「私の部署は誰もが優秀ですが、とりわけ新婦は」と続けた瞬間、同じ部署から来た列席者たちの箸が一瞬止まります。褒められたのは一人だけなのに、その場の全員が何かを受け取っています。発話が文字どおりの意味の外側で何を運ぶのか——それを扱う語用論という分野にとって、この副詞は格好の教材です。

この語が文の中で働くためには、二つの条件が先に満たされていなければなりません。第一に、比較の母集合がすでに談話の中に存在していること、第二に、その母集合の全体が当の性質をある程度満たしていることです。「誰もが優秀」という土台を先に敷いてから、その上に一人を載せます。全体を持ち上げたうえで頂点を指す、二段構えの持ち上げです。語源をたどれば動詞「取り分ける」、鍋の料理を特定の一皿へ移す動作に行き着くのも、この構造とよく符合します。全体という鍋があって、はじめて取り分けられる。動作がそのまま論理の形になった例です。

問題は、明示されない部分で起きます。頂点を指した瞬間、母集合の残りは「頂点ではない」と言われたことになります。発話のどこにもその文言はないのに、含みとして必ず届きます。褒め言葉の分配は、しばしばゼロサムである。聞き手が母集合の内側にいるとき——冒頭のスピーチの、箸を止めた列席者たちのように——この含みは祝辞の中の小さな棘になります。対人配慮の研究では、こうした含みは相手の面子に触れる危険として扱われ、話し手は緩和の手当てを添えることが多いとされます。「誰もが優秀ですが」という前置き自体が、その手当てにあたります。祝辞の名手が、一人を指したあとで必ずもう一度全体へ視線を戻すのも、この棘の在り処を知っているからでしょう。

このスポットライトは、明るい場所専用ではありません。「その冬は寒かった。とりわけ、父が入院した一月は」という書き方のように、苦痛や不幸にも同じ仕組みで使えます。全体がすでに苦しく、その中の一点がさらに苦しいという配置です。褒めの場面では棘だった含みが、ここでは反転して働き、名指されなかった残りの日々も苦しかったのだと、言わずに伝えてくれます。負の頂点は、負の土台を無言で証言します。

もうひとつの性質は、文脈への依存です。母集合が言葉で示されていなくても、この語は文脈から勝手に母集合を調達します。「とりわけ今朝は冷えた」と言えば、ここ数日の朝、という集合が暗黙のうちに立ち上がります。書かれていない集合を読者に自力で組み立てさせる、省力の装置でもあるわけです。逆に言えば、調達すべき文脈が何もない文章の冒頭には置けません。前提を欠いた頂点は、宙に浮くだけです。

小説でこの語を使う瞬間、作者は読者に序列表を開示しています。視点人物が誰に、何にこの語を向けるかは、その人物の価値の配置図そのものだからです。そして名指された一人の背後には、名指されなかった全員が必ず立っています。誰を選ばせるかの設計は、誰を選ばせないかの設計と同じ作業です。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →