報復

【ほうふく】名詞

使い分けの視点

「報復」は二拍ずつに割れる硬い漢語で、制度や組織が行う反作用に向きます。個人の体温を出すなら「仕返し」、長い執念なら「復讐」、即時の応戦なら「反撃」と、行為者の立場と時間幅を選び分けると輪郭が明確になります。

同義語

同品詞の類義語

反撃
仕返しcolloquial
復讐
返報文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

お返しの一撃colloquial
目には目を文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

鏡写しのような文芸的
矢が跳ね返るような文芸的
雷のような

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

打ち返す
やり返すcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

しっぺ返しcolloquial
対抗措置
倍返しcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

仕返す

例文: 罠師は奪われた地図を取り戻し、追手へ同じ手で仕返す。

息だけでできた四拍——音は意味に似るか

声に出してみると、この語には濁りも破裂もありません。ホ、ウ、フ、ク。四拍のうち二つは息の摩擦だけで始まり、残りは母音と、喉の奥で軽く切れる音です。唇は二度構えるのに、一度もぶつからない。意味のほうには血の匂いがするのに、口の中で起きていることは驚くほど乾いています。この落差にはどんな説明が付くのか。まず疑うべきは、乾いて聞こえること自体がいつからのものか、という点でしょう。

歴史をたどると、この乾き方は比較的あとから来たものらしい、という話になります。日本語のハ行の子音は古い時代には唇を使う音であり、さらに遡れば破裂に近かったと考えられています。その説に従うなら、この漢語が受け入れられた頃の発音には、いまよりずっと唇の閉じる感触があったことになる。時代が下るにつれてハ行の子音は摩擦へ、さらに息へと力を落としていった。語が指す行為の激しさはそのままで、音のほうだけが長い時間をかけて力を抜いていった——と書くと収まりがよすぎるので、ここでいったん止まります。

止まる理由は、この語とまったく同じ音を持つ別の語があるからです。腹を抱えて笑うことを言う「抱腹」がそれで、絶倒と続けて使われます。音が意味を映すのだとすれば、報いの語と大笑いの語が同じ音になるのは都合が悪い。音象徴の議論が言語全体の傾向として何かを示すことはあっても、個々の語の音からその語の意味を読み取る根拠にはならない、と考えたほうが安全でしょう。乾いて硬く聞こえるのは、意味を知っている耳がそう聞いているからだ——この説明のほうが素直です。ついでに言えば、和語の情念語には濁音を含むものが目につくという印象もありますが、これも数えたわけではなく、印象の域を出ません。

それでも残るものはあります。音の印象ではなく、拍の構造のほうです。この語は二字漢語の典型で、二拍と二拍にきれいに割れる。左右が対称で、前後にどんな語が来ても形が崩れない。対して「仕返し」は同じ四拍でも和語で、シ・カ・エ・シと均等に並び、語尾が軽く下がって話し言葉の側へ寄ります。「復讐」は拗音と長音を含むので、四拍のうちに伸びと屈折が入り、重心が後ろへ移る。「反撃」は撥音がひとつ入って、途中で息が鼻へ抜ける。同じ意味領域に並ぶ語が、拍の設計だけでこれだけ違う姿勢を取っている。

そう考えると、選び分けの基準は感情の強さではなく、その一文がどの場所から発せられているかになります。制度や国家の側から言うなら、崩れない二拍二拍が向いている。個人の口から出るなら、語尾の下がる和語のほうが体温に合う。執念の年月を背負わせたいなら、伸びのある語形が要る。台詞に「報復する」と言わせたとき、その人物が急に公的な立場から喋りはじめたように聞こえるのは、この構造の差によるものでしょう。音そのものが意味を作らないとしても、拍の並びは話者の立ち位置を確かに作っています。乾いているのは、語よりも、その語を選べる立場のほうかもしれません。

文: hakadoru.ai 編集部

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