消え入るような

【きえいるような】形容詞句

使い分けの視点

後ろの名詞を必ず選び、声、灯、望みなど、何が小さく消えかけているのかを具体化します。音の細い語なので、周囲の物音を先に静め、聞き手の動作へつなぐと効果的です。一場面に重ねすぎず、一度の衰えを丁寧に追います。

同義語

同品詞の類義語

か細い文芸的
微かな文芸的
息も絶え絶えな文芸的
弱々しい

類義句

同品詞の慣用的言い換え

風前の灯のような文芸的
息を引き取るような文芸的
今にも途切れる

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

蝋燭が消えるような文芸的
夜霧に溶けるような文芸的
風に吹かれた灯のような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

か細く文芸的
細々と文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

途切れる
息を引く文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

微声文芸的
弱音の響き文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

今にも絶える灯のような文芸的
夜風に攫われる声めいた文芸的
息も継げぬほどの文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

七拍の下降エッセイ関連

例文: 七拍の下降を描いて、笛の音は山の夜気へ細く沈んだ。

黙読しているのに音量が下がる

なぜこの句は、声に出していないのに音量が下がって聞こえるのでしょうか。意味が弱さを指しているから、と答えるのは早い気がします。同じく弱さを指す語と並べても、この句だけがもう一段下がって感じられる。私にはそう感じられる、というだけの話かもしれないので、そこは留保します。ただ、留保したうえでも、音の側に何かがあるのではないかという疑いは残ります。意味だけなら、これほど差がつく理由がない。

口に出してみると、七拍のうち前半の三拍が、i と e という前寄りで開きの小さい母音で占められています。開きが小さければ、同じ息の量でも音圧は上がりにくい。加えて、この句には濁音が一つもありません。破裂の強い子音もなく、途中に入るのはラ行の弾き音で、これも息を強く止めない音です。大きく読もうとすると、口の形を作り直す必要が出てくる——構えを変えずに大声を出せない配列になっている。音読すれば自然に小さくなるのは、たぶん偶然ではありません。

音の質と印象の対応については、古くから報告があります。二十世紀の前半に行われた古典的な実験では、mil と mal のような対を示して大きさを判断させると、i を含むほうが小さいものとして選ばれる傾向があったとされます。同種の対応は複数の言語で繰り返し観察されていて、狭い母音と小ささのあいだに、弱いながら安定した結びつきがあるらしい。日本語については、濁音が大きさや重さの印象と結びつくという報告もあります。この句に濁音がないことは、その点でも効いている可能性がある。

長さも効いています。この句はちょうど七拍で、日本語の定型が好む単位にそのまま収まる。だから、地の文の途中に置いても拍が乱れず、読者はここで引っかからずに通過します。引っかからないというのは、比喩として意識されないということでもある。八拍や九拍の言い回しなら、読み手はいったん立ち止まって表現を吟味する。七拍で滑り込む句は、吟味を経ずに情景の側に紛れ込む。効き方が穏やかなのは、意味が穏やかだからではなく、拍が定型に乗っているからかもしれません。

ただ、音だけで説明しようとすると足をすくわれます。この句は意味の側からしてすでに弱い。消えるという動詞に、内側へ入っていくという方向が足されている。外へ広がるのではなく、内へ向かって減っていく運動が語の中に書き込まれている以上、音の寄与だけを取り出すことはできません。音と意味を切り離した対照実験でも組まない限り、どちらがどれだけ効いているかは決められない。ここは決着をつけずに置きます。

決められないまま、それでも残る観察が一つあります。書き手が読者の発声を——黙読のときにも働く内的な発声を——設計できる範囲は、かなり狭い。語順や句読点で速度を操作することはできても、声の大きさまで届く手段は多くありません。この句は、その狭い範囲に入っている数少ない表現です。だからこそ、地の文で繰り返すと効きません。一つの場面に一度、声そのものを描くときだけに置く。音の設計は、頻度を落とすことでしか守れない。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →