喧しい

【やかましい】形容詞

使い分けの視点

「喧しい」は音量だけでなく、その音を不快と判断する聞き手を含む語です。「けたたましい」は切れ切れの鋭い音、「わんわんと」は反響、「雑音」は意味を扰げる音へ焦点があります。祭りを楽しむ者と耐える者など、同じ音への態度で選びます。

同義語

同品詞の類義語

騒がしい
けたたましい文芸的
耳障りな

類義句

同品詞の慣用的言い換え

鼓膜を破るような文芸的
耳をつんざく
耳を塞ぎたくなる

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

雷鳴のような文芸的
工事現場さながらの
市場のような

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

がやがやとcolloquial
わんわんとcolloquial
けたたましく文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

騒ぎ立てる
わめき散らすcolloquial
耳を打つ文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

喧騒文芸的
騒音
雑音

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

耳に痛いほどの
頭に響くcolloquial
気が狂いそうなcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

例文: 「うるさい」の四拍が静まった議事堂に飛び、袋小路の施策がようやく動き出した。

聞き手の評価エッセイ関連

例文: 祭囃子を喧しいと書いた記者は、それが音の測定ではなく聞き手の評価だと翌日の祭りで知った。

五拍の一喝——開いた母音が三つ続く語のこと

ヤカマシイ。声に出すと、ア段の音が三つ並んでから、最後にイ段へ落ちます。や・か・ま・し・い。五拍。母音を書き出すと a-a-a-i-i で、前半はずっと口が開きっぱなしになる。この並びを、近い意味の語と比べてみたくなりました。うるさい、は u-u-a-i の四拍。さわがしい、は五拍で a-a-a-i-i と母音列が同じ。けたたましい、は六拍で、途中に t が二回続く。

子音の側も見ておきます。やかましい、に含まれる破裂音は k のひとつだけで、あとは y・m・sh という、息の抜ける音です。けたたましい、は k と t と t、破裂音が三つ、しかも同じ子音の連打がある。連打が打鐘や叫声の切れ切れの印象につながっているのだろう、という見当は立ちます。さわがしい、には濁音の「が」がある。日本語のオノマトペでは、清音と濁音の対が大きさや粗さの差に対応する傾向が指摘されてきました。さらさら/ざらざら、かたかた/がたがた。この傾向に素直に従うなら、濁音を持つ「さわがしい」のほうが重く粗く響くはずです。

ところが実感は逆でした。少なくとも叱責の場面では、濁音のないほうが強い。ここで音象徴だけで押し切ろうとしていた自分の説明が止まります。音の形は印象に寄与するが、寄与するだけで、決めてはいない。

止まったところで別の角度から見ると、差は音より使われ方にありました。やかましい、は単独で一喝になる。語尾も助詞も付けずに投げつけて、命令として成立する。うるさい、も同じことができる。さわがしい、はできません。「さわがしい!」と怒鳴る場面を想像すると、どうしても間が抜ける。これは音韻の問題ではなく、その語が長く担ってきた役割の問題です。

とはいえ、音がまったく無関係というわけでもなさそうです。一喝に使える語を並べると、共通点が見えてきます。短いこと。母音が開いていること。末尾が母音イで、息を止めずに切れること。呼びかけや制止に使われる語は、遠くまで届き、途中で失速しない音形を持っている——「危ない」も「待て」も、そこは共通しています。役割が音形を選び、選ばれた音形が役割をさらに強めた、という順序なら筋が通ります。音が意味を作ったというより、用法が音を選り分けたのです。

五拍という長さも、日本語の文のなかでは扱いやすい単位です。定型詩の五音にそのまま収まり、助詞や終助詞を一つ足せば六拍になって句の途中でも据わりがいい。地の文に置いたときに文のリズムを乱しにくいのは、この寸法のおかげだと思います。

そこまで見てから創作の話に戻ると、注意すべき点がひとつ残りました。この語は音量の記述ではなく、評価だということです。擬音語は音そのものを写しますが、形容詞は「その音を不快と判断した誰か」を連れてきます。地の文に置けば、視点人物が耐えていることまで同時に書いたことになる。同じ祭りの音を、浮かれている人物の視点では別の語で書かねばなりません。音を写したいのか、音に対する態度を写したいのか——その区別が付いていれば、五拍の強さは狙って使えます。

文: hakadoru.ai 編集部

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