不揃い

【ふぞろい】形容動詞

使い分けの視点

「不揃い」は欠損そのものではなく、揃っているはずだという基準との差を表します。「まばら」は密度、「でこぼこ」は表面、「ちぐはぐ」は組合せの不調和へ焦点を移します。群像や品物の個性を見せるなら、制服や規格など比較の物差しを先に置き、そこから外れる輪郭を描くと雑多さと区別できます。

同義語

同品詞の類義語

まばらな
でこぼこのcolloquial
ちぐはぐな
いびつな

類義句

同品詞の慣用的言い換え

大きさがまちまちのcolloquial
背格好がばらばらのcolloquial
規格外の

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

寄せ集めのパズルのようなcolloquial
歯抜けの櫛のように文芸的
片方だけの靴のようなcolloquial

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

でこぼこにcolloquial
ちぐはぐに

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

揃わない
ばらつく

体言的言い換え

用言を体言に変換

凹凸
ばらつき

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

大小さまざまの
形がまちまちのcolloquial
揃い踏みにならない文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

基準から外れるエッセイ関連

例文: 同じ書式の名札を並べると、一枚だけ手書きで基準から外れる文字が目立った。

揃うことが背景になるまで

店先の籠に盛られたトマトの直径が、どれもほとんど同じであることを、買う側はふつう気に留めません。色も揃っている。揃っていることが背景に沈んでいて、そこに設計があるとは思わない。しかし畑から掘り出したものが自然に同じ大きさになるわけではなく、あの籠の均一さは選別という工程の産物です。そして選別が可能になるには、大きさを比べる共通の物差しが先に要る。均一さは自然の状態ではなく、制度と作業の積み重ねの上に載っている結果です。

明治期に、国家は度量衡の体系を統一しました。地域ごと、業種ごとに違っていた升や尺が一つの規格に置き換えられていく過程です。統一の目的は徴税と商取引の円滑化にありましたが、副産物として、比較という行為の土台ができた。基準がなければ、揃っているとも揃っていないとも言えません。何かを「不」揃いと判じるためには、先に揃いの側が定義されている必要がある。この語は、それ自体としては欠如を述べているようでいて、実は規格の存在を前提として告白しています。物差しの普及より前の社会に、この判断がなかったとまでは言えませんが、判断の解像度がまるで違ったことは想像がつく。

十九世紀の工業化を通じて、部品を交換可能にするという思想が広まりました。同じ寸法で作られた部品はどの個体にも収まり、修理は職人の技から在庫の照合に変わる。壊れた箇所を削って合わせる作業が、番号を調べて取り寄せる作業に置き換わったわけです。日本では戦後、一九四九年の工業標準化法によって工業規格の体系が整えられ、ネジの径からその表示に至るまで、寸法の一致が品質そのものの指標になっていきます。ここで意味の重心が動く。揃っていることは、単に便利であるだけでなく、正しいこととして扱われ始める。

やがて規格は人体にも及びました。既製服のサイズ体系は、身体を有限個の型に割り当てる仕組みです。型に収まらない身体は「規格外」と呼ばれる。農産物にも同じ語が使われ、味と無関係な形状の逸脱が長らく出荷を止めてきました。もっとも、価値は一方向には流れません。一九八三年に放送された山田太一脚本のテレビドラマ「ふぞろいの林檎たち」は、この語を欠損ではなく人物の輪郭として使いました。近年は規格外の野菜がその名のまま商品として流通し、揃っていないことが手仕事や産地との近さの標識として読まれる場面も増えています。同じ語が、百年ほどのあいだに減点の記号から個性の記号へ、少なくとも一部の文脈では位置を変えた。

書き手が群像を扱うとき、この歴史がそのまま技術になります。差異を書きたいのなら、先に基準を読者に見せておくこと。制服、整列、同じ挨拶、同じ書式の名札。基準を一度提示してから逸脱を並べれば、読者はそれを測ることができる。基準なしに差異だけを並べると、雑多にしか見えません——不揃いは、揃いを背景に持ってはじめて意味を持つ図形です。そして基準の側を丁寧に書くほど、そこから外れる一人の輪郭は鮮明になる。

文: hakadoru.ai 編集部

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