まちまち

【まちまち】形容動詞

使い分けの視点

「ばらばらな」「不統一」「統一感を欠いた」は全体の不揃いを述べ、「食い違う」は内容の矛盾、「歩調がそろわない」は行動のずれを示します。「銘々に」「各人各様の」は個別性を認める中立表現です。「寄せ集めの軍のような」などの比喩は乱雑な像を強め、「まばらな」は密度の低さに限って用います。

同義語

同品詞の類義語

ばらばらなcolloquial
てんでばらばらのcolloquial
区々たる文芸的
まばらな

類義句

同品詞の慣用的言い換え

人によって違うcolloquial
そろっていない
足並みが乱れた

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

寄せ集めの軍のような文芸的
模様替えの途中みたいにcolloquial
転校生の名簿のようなcolloquial

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

てんでcolloquial
銘々に文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

食い違う
てんでんばらばらになるcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

不統一
ばらけcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

歩調がそろわない
各人各様の文芸的
統一感を欠いた

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

違いを上から眺めるエッセイ関連

例文: 記録官は村ごとの祭礼の差を良し悪しで裁かず、違いを上から眺める一覧にまとめた。

一語で「互いに」を言う——英訳が二語増える理由

英語に移そうとして手が止まる語があります。この語もその一つでした。various を当てると、多様さを歓迎している響きが出てしまう。inconsistent を当てると、揃っていないことへの非難が混じる。different は文法の側から抵抗してきます。英語の differ は比べる相手を必要とする動詞で、何かは何かと異なるとしか言えない。ところが日本語のこの語は、相手を書かないまま、集まり全体の内部がばらけていることだけを述べます。

どうしても添えものが要る。They differ among themselves. あるいは Their answers varied from person to person. among themselves や from person to person が足されているのは、装飾ではなく必要な補いです。日本語側では一語に畳まれていた相互性が、英語では別の句として外に出てくる。中国語には「参差不齊」のような四字の言い方があり、漢語表記として当てられる「区々」も、もとは同じ字を重ねることで多数性を字面に出しています。相互性を一語に押し込む言語と、句で展開する言語がある——訳文が長くなるのは、訳者が冗長なのではなく、分節の単位が違うからです。

ここで一つ気づきます。この語は主語に複数であることを要求します。一つのものはこの状態になれない。意見でも時刻でも品質でも、複数の実例が背後に含意されていなければ文が立たない。名詞に単数複数の標示を持たない日本語が、述語や副詞の側で複数性を拾っている、と言いたくなります。ただしそう言い切る前に反証を出しておくべきでしょう。同じ要求をする語は他にもある。めいめい、それぞれ、口々に、いずれも複数がなければ使えません。つまりこれは例外的な一語の芸を越えて、複数性を語彙の各所に分散して担わせるという、体系の側の傾向を示しています。

もう一つ、訳しにくさの核心は評価の温度にあります。この語は褒めても貶してもいない。揃っていない事実だけを、まっすぐ置きます。英語で中立を保とうとすると vary という動詞に落ち着くことが多く、名詞や形容詞で中立の位置に立つ語を探すのは難しい。diverse は肯定に、uneven は否定に傾く。温度ゼロの記述語が、言語によって在庫の場所が違うのだと考えると、翻訳の作業が語彙の探索ではなく品詞の乗り換えになる理由も見えてきます。

小説に引き寄せると、この温度ゼロが視点の高さを決めます。集団の内部がばらけていることを、評価せずに一望できる位置——それは群衆の外に立つ語り手の位置です。至近距離にいる一人称の人物がこの語を使うと、急に俯瞰へ跳ね上がったように読める。逆に、俯瞰から入って群衆を一度平らに均しておき、次の段落で一人の顔に寄る、という運びには具合がよい。訳しにくさの所在は、そのまま、この語がどこから世界を見ているかの所在でもあります。

文: hakadoru.ai 編集部

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