のみならず

【のみならず】接続詞

使い分けの視点

「ばかりでなく」「それだけでなく」は範囲を素直に広げ、「加えて」「そのうえ」は同程度の追加です。「おまけに」は口語で不満や幸運を重ね、「ばかりか」「あまつさえ」「それどころか」は後件の意外性を強めます。「ひいては」は因果の波及、「しかも」は両立の強調に向きます。

同義語

同品詞の類義語

ばかりでなく
それだけでなく
加えて
おまけにcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

ばかりか
あまつさえ文芸的
ひいては文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

そのうえ
それどころか
しかも

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

後件へ目盛りを上げるエッセイ関連

例文: 二つ目の功績をより珍しく置き、語り手は後件へ目盛りを上げる順序を守った。

目盛りを約束する接続——範囲を広げる語の内側

「のみ」は限定です。ある集合を指して、これだけだと囲う。その囲いを打ち消して外側まで手を伸ばすのが「のみならず」で、集合の言葉で言えば、適用範囲がAだけだという想定を退けてBまで含める操作にあたります。ただ、これを和集合だと言ってしまうと足りない。和集合には順序がなく、AとBのどちらを先に書いても同じものになる。この接続詞は、順序を入れ替えると壊れます。

「彼は英語のみならず日本語も話す」と「彼は日本語のみならず英語も話す」。前者は、日本語を話すほうが珍しいという前提を作る。後者はその逆です。同じ二つの要素を扱いながら、どちらを後ろに置いたかで、読者は勝手に目盛りを立ててしまう。後ろのほうが上、という向きだけが決まっていて、目盛りそのものは文の中に書かれていない。数の上の単調な並びを思い浮かべると分かりやすいのですが、この語は、要素が並ぶ一本の尺度が存在することを前提にして、その尺度上で右へ動く働きをしている。

近い顔をした接続詞と比べると、性格が分かれます。「ひいては」は、AがBを引き起こし、BがCを引き起こす、という連鎖を一語で畳む。順に辿れば端まで届く、という推移の関係です。「のみならず」にはその連鎖がない。AとBの間に因果はなく、ただ同じ尺度の上に並んでいるだけで、話者は範囲を広げただけです。連鎖の圧縮と、範囲の被覆。似た位置に現れるのに、していることは別物で、取り違えると文の論理がひとつ抜けます。

尺度が一本に定まらない場合を考えると、この性格ははっきりします。二つの要素が、どちらが上とも決めがたい関係にあるとき——順序が全体には行き渡らず、比べられない組が残っている状態です——この接続詞は途端に据わりが悪くなる。「彼は絵のみならず料理も得意だ」が落ち着かないのは、絵と料理を並べる共通の物差しが用意されていないからでしょう。話し手が「珍しさ」なり「難しさ」なりの軸を一本立ててくれれば通る。立たなければ、二つの得意が横に並ぶだけになります。

ここで立ち止まります。尺度は本当に文の外にあるのか。実際の文章では、読者が後ろの要素を見てから、そういえばこちらのほうが珍しい、と事後的に目盛りを組み立てていることが多い。だとすると、この語は尺度を参照しているのではなく、尺度の存在を読者に約束している、と言い直したほうが正確かもしれません。約束されたから読者は探す。探して見つからなければ、二つの項がただ並んだだけの文になり、接続詞が空回りする。「のみならず」で繋いだ二項が同じ強さだったときの間の抜け方は、この空回りとして説明できます。

書き手への含意は二つあります。一つは、繋ぐ前に後ろの項が本当に上にあるかを確かめること。もう一つは、頻度の問題です。この語を使うたびに、文は上向きの矢印を一本引く。段落の中で三度も四度も引けば、矢印は目立たなくなり、読者は目盛りを組み立てるのをやめてしまう。文語の格を持つ語なので、地の文に置くと一段だけ調子が上がる——その上がり幅を保つためにも、一つの場面で使うのはせいぜい一度にとどめたほうがいい。

文: hakadoru.ai 編集部

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