加えて

【くわえて】接続詞

使い分けの視点

追加の接続語は同じ足し算ではありません。「加えて」は前の主張を保ったまま同方向の根拠を重ね、「また」は並列、「なお」は補足へ寄ります。前後が両立するか、順序で説得力が変わらないかを確かめます。

同義語

同品詞の類義語

そのうえ
おまけにcolloquial
なおかつ文芸的
また

類義句

同品詞の慣用的言い換え

それに加え
のみならず文芸的
ひいては文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ついでにcolloquial
あまつさえ文芸的
そんでもってcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

同じ方向へ積むエッセイ関連

例文: 同じ方向へ積む二つの証言が、崩れかけた告発に最後の重みを与えた。

連結は交換できない——足し算と文章の違い

プログラミングの世界では、足し算に二つの種類があります。数の加算は、3+5でも5+3でも結果が変わりません。この性質を可換と呼びます。一方、文字列の連結は順序を入れ替えると別物になります。「朝」と「顔」をつなぐ順で「朝顔」にも「顔朝」にもなるように、連結は非可換な演算です。多くのプログラミング言語が加算と連結に同じ記号を使いながら、両者はまったく違う規則に従っています。

文章の接続詞「加えて」が行っているのは、このうち後者です。論拠Aに論拠Bを足すとき、AとBの順序は交換できません。先に置いた論拠が読者の頭の中に文脈を作り、後の論拠はその文脈の上に着地するからです。決定的な証拠を先に出してから小さな傍証を足すのと、小さな傍証を並べてから決定的な証拠で締めるのとでは、同じ材料でも説得の形が変わります。数を足しているつもりで、実際には文字列を連結している——書くという行為の実態は、いつもそちらです。

非可換のほかに、連結にはもう二つの性質があります。結合律と単位元です。文字列をつなぐとき、どこに括弧を付けても結果は同じになる。空文字列をいくら連結しても、もとの文字列は一字も変わりません。ところが文章のほうは、そのどちらも満たしていない。三つの論拠を積むとき、一段落にまとめるか二段落に割るかで、読者が受け取る構造は変わります。中身の薄い一文を挟めば、演算としては何も足していないつもりでも、読者の集中は確実に削られる。文章の加算には、無害な単位元がないのです。数学の比喩をここまで引き延ばして、ようやく分かることがあります。文章はきわめて扱いにくい代数だ、ということです。順序も、括弧の位置も、空の項も、すべてが結果に効いてくる。機械が保証してくれる性質が一つも成り立たない領域を、書き手は毎日、足し算と呼んで扱っています。

論理学には、この接続詞の働きをもう一段正確に言い当てる概念があります。単調性です。古典論理では、前提を追加しても、すでに導けていた結論が導けなくなることはありません。知識が増える一方で減らない、という意味で単調と呼ばれます。「加えて」は、この単調な積み上げの合図です。直前の主張を取り消さず、生かしたまま、その上に新しい主張を積むと宣言しています。対照的に「しかし」や「とはいえ」は、前に積んだものの一部を撤回または制限する非単調な合図です。接続詞の体系は、論証の増築と改築を区別する記法だと見ることができます。

この見方は、推敲の道具として使えます。「加えて」と書いた箇所では、直前の主張が無傷で生きていることを、書き手は読者に保証しています。ところが実際の原稿では、積んだつもりの二つの論拠が静かに矛盾していることがあります。プログラムなら型検査や実行時エラーが矛盾を報せてくれますが、文章の検査系は読者の頭の中にしかありません。そして読者の検査は容赦がなく、保証違反を見つけた読者は、エラーを報告する代わりに、黙って信頼を下げます。

積む速さと読む速さも、別々に測る必要があります。計算機の世界には、末尾への追記だけを許す記録の形式があります。後ろに足していくだけなので書き込みは速い。そのかわり読み出す側は、散らばった追記を後から突き合わせて現在の姿を組み立てねばならず、そのぶん手間がかかります。論拠を並べる文章も同じ構造をしていて、書き手にとって「加えて」は最も安い操作である一方、読者にとっては最も高い操作になる。積み上げた論拠を最後に一度まとめ直す段落が要るのは、この非対称のためです。まとめが省かれた文章は、書き手の帳簿の上でだけ完成しています。読者の帳簿には、突き合わせの済んでいない行だけが残る。

似た働きの「また」「なお」との違いも、この枠組みで説明できます。「また」は並列で、二つの主張の重みをほぼ等しく扱います。「なお」は本筋から一段落とした補足を積みます。それらに対して「加えて」は、同じ方向を向いた論拠を同格のまま重ね、論証の圧を一段高める合図です。積む高さと角度が、三語で微妙に違う。だから、この接続詞を原稿で見かけるたびに、前後の二つの主張を並べて検算する価値があります。本当に両立しているか、順序はこれでよいか、連結ではなく実は逆接でつなぐべき関係ではないか——確かめる点は三つです。数の足し算なら順序も整合も機械が保証してくれますが、言葉の積み上げでは、検査器を務めるのは書き手自身になります。

文: hakadoru.ai 編集部

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