ともかく

【ともかく】接続詞

使い分けの視点

「とにかく」は行動や程度を強く押し出し、「ともあれ」は未決のまま場面を締めます。「ひとまず」「差し当たり」「ひとまずは」は期限つきの処置です。「それはさておき」は明示した話題を転じ、「なにはなくとも」は不可欠な物を選び、「なにはともあれ」は結果への安堵を表します。

同義語

同品詞の類義語

とにかく
ひとまず
ともあれ文芸的
なにはともあれ

類義句

同品詞の慣用的言い換え

それはさておき
なにはなくとも文芸的
とりあえずcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

差し当たり文芸的
なんにせよcolloquial
ひとまずは

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

論点を棚上げするエッセイ関連

例文: 委員長は壁画の作者を巡る論点を棚上げし、崩落しかけた保存庫から作品を運び出した。

優先順位を露出させるエッセイ関連

例文: 船長が積荷より乗客の救助を選んだ瞬間、その命令は彼の優先順位を露出させた。

指示語が指を失うまで——「と」と「かく」の千年

とかく、とやかく、とにかく、とにもかくにも。並べてみると、共通の骨格が透けて見えます。「と」と「かく」です。現代語ではもう意味を持たない空の音のようですが、古典語ではどちらも一人前の指示副詞でした。「と」は「そのように」と、あちらを指す指です。「かく」は「このように」と、こちらを指す指です。二本の指を交互に振れば「ああもこうも」、つまり考えうる選択肢の全体を手で掃く仕草になります。

古典語には「とにかくに」「とてもかくても」といった形が見え、あれこれと思い迷うさま、どちらに転んでもという放任を表しました。この頃はまだ、指し示す中身のある具体的な言葉です。ああしようか、こうしようかという迷いの両端を、二つの音が実際に指していました。

それから千年、この語群は削られ続けます。七拍の「とにもかくにも」の系統に、助詞の抜けた五拍の「ともかくも」、さらに「も」まで落とした四拍の形が現れ、長い目で見れば短いほうへ重心が移っていきました。音が減るのと並行して、意味も変わります。「ああでもこうでも」という指示の中身が薄れ、「それはどうでもよいものとして」という談話の操作だけが残ります。言語学で文法化と呼ばれる過程の、手頃な見本です。似た運命をたどった語は少なくありません。別れの挨拶「さようなら」は、「さようならば」、すなわち「そのようであるならば」という条件の言い回しが挨拶に転じて末尾を落とした形です。使用頻度の高い言葉ほど摩耗が速いことは広く観察されていて、よく触る手すりから先に塗装が剥げるのと同じ理屈だと説明されます。指示語は指示対象を失い、話の交通整理の係に転じました。

磨り減った兄弟たちは、現代語で別々の職に就いています。「とにかく」は強調に寄り(とにかく暑い)、「とかく」は傾向の副詞へ(とかく人は忘れる)、そして「ともかく」は棚上げの専門職になりました。なかでも「AはともかくB」の構文は独自の発明です。Aを議論の場から一時退場させ、Bに照明を当てます。順番が肝心で、退場させる側を先に言うから、聞き手はBを待ち構えて聞くことになります。同じ二語から出発した語たちが、摩耗の果てに、互いに代替の利かない道具になっています。試しに入れ替えてみると分かる。「とにかく暑い」を「ともかく暑い」に変えると、暑さより先に、何かを打ち切った気配のほうが立ちます。

会話の場面では、この語は登場人物に「いま何を優先するか」を宣言させる最短の道具でもあります。議論が紛糾した場面で誰かが「それはともかく」と言えば、読者はその人物が場を仕切る側だと理解します。棚上げは、権限の行使でもあるからです。「あの人のことはともかく、仕事の話をしよう」という一文が伝えるのは、話者が何を後回しにしたか、言い換えれば何から目を逸らしたかです。かつて「ああ」と「こう」を指していた二本の指は、指示対象を失った千年の後、いまは話者の優先順位——ときにその回避——を指しています。摩耗は喪失ではなく、転職でした。

文: hakadoru.ai 編集部

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