とにかく

【とにかく】接続詞

使い分けの視点

「ともかく」「ともあれ」は未決事項を脇へ置き、「ひとまず」「差し当たって」は暫定策を選びます。「とりあえず」は口語的な着手、「なにはさておき」は最優先事項の選出です。「どうあっても」は強い意志、「やみくもに」は方針の欠如、「ぶっちゃけ」は率直な発言を表します。

同義語

同品詞の類義語

ともかく
ともあれ文芸的
ひとまず
とりあえずcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

なにはさておき
とにもかくにも文芸的
どうあってもcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

やみくもに
差し当たって文芸的
ぶっちゃけcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

探索を打ち切るエッセイ関連

例文: 救助隊長は原因究明の探索を打ち切る決断をし、残り十分を坑道からの退避へ使った。

判断を後ろへ回すエッセイ関連

例文: 医師は誰の責任かという判断を後ろへ回す一方、解毒剤の調合だけはすぐに始めた。

探索を打ち切る合図——判断を先送りするという判断

分岐のある問題を素直に全部展開しようとすると、たいてい途中で手に負えなくなります。一手ごとに選択肢が数本ずつ増えれば、深さに対して場合の数は指数的に膨らみます。計算機でこれを扱うとき、正攻法は網羅ではなく、探索の深さに上限を設けることです。ここまで潜って結論が出なければ、そこで打ち切って現時点の最善を返します。正確さを一部あきらめる代わりに、有限時間で答えを出す仕組みを入れるわけです。この設計を思い浮かべながら会話を聞いていると、日本語にも同じ役目の合図があることに気づきます。

条件の数え上げは、放っておけば止まりません。あれもあるしこれもある、その場合はこうなるが例外があって——という展開は、参加者の誰かが止めない限り深さを増していきます。この副詞は、その展開の中断を宣言する語です。特徴的なのは、中断したあとに必ず何かが来ることです。後ろに置かれるのは命令か決定であって、疑問や条件ではありません。探索を止めて、その時点の最善手を出力する形と、きれいに対応しています。

打ち切ったあとに何を出すか、という問題も残ります。計算機側の定石のひとつは貪欲法です。その場でいちばん筋のよさそうな選択肢を採り、後戻りせずに進む。全体として最適である保証はありませんが、多くの問題で実用に足る答えが、比べものにならない速さで出ます。会話で中断を宣言したあとに続くのも、たいていこの型の答えです。最善である根拠は示されず、いま手に入る範囲でましなものが提示される。注意しておきたいのは、貪欲法が乱暴な手法ではないことです。全体を見渡す余裕のない状況では、手元の情報だけで決めるほうが合理的でありうる。乱暴に見えるのは、余裕のある側が余裕のない側の手つきを眺めているときです。そして貪欲法には、選んだ枝を選び直さないという性質もあります。一度進んだら戻らない。この副詞のあとに置かれた決定が、条件の再検討を受け付けにくいのも、同じ形をしています。

語形をたどると、この対応はもう少し面白くなります。この語は「とにもかくにも」の縮まった形と理解されており、二つの副詞を「も」で受けて並べ、そこから全体を尽くす古い構文が骨格に残っています。つまり出発点は網羅の表現でした。全部を挙げる言い方が、全部を挙げるのをやめる言い方に転じています。逆転のようですが、実際には同じ動作の裏表です。網羅も打ち切りも、個々の枝を個別に評価しない点では一致しています。一つずつ吟味しないと決めた瞬間、全部を並べるのと全部を飛ばすのは同じ操作になる。

とはいえ、打ち切りだけでは説明しきれない用法があります。「とにかく話を聞こう」は、判断を捨てているのではなく、後ろへ回しています。捨てるのと延期するのは、結果がまるで違います。しばらく引っかかっていたのですが、計算の側にも対応する道具はありました。値を要求された時点では計算せず、実際に必要になるまで未評価のまま持ち歩く仕組みです。この副詞がやっているのは、判断の破棄ではなく、判断のそういう保留に近いものでしょう。いまのフレームでは評価しない、と決めること自体が、一つの判断になっています。

会話が二人以上で進むことも勘定に入れておきます。参加者はそれぞれ自分の探索を回していて、打ち切る深さも人によって違う。片方がまだ枝を伸ばしている最中に、もう片方はすでに答えを出している。このずれは、計算機の世界では待ち時間の問題として扱われます。応答がいつまでも返らない相手を無限に待つ設計は、系そのものを止めてしまう。だから上限時間を決め、超えたら既定の値で先へ進む仕組みを入れます。会議でこの副詞が飛び出すのは、たいてい誰かがその上限に達した瞬間です。宣言した本人が結論を握っているとは限りません。握らないまま、止まっているほうが高くつくと見積もっている。中断を言い出せるのは、答えを持っている人よりも、待ち時間の費用を数えている人のほうです。

そう捉えると、台詞への配り方が具体的になります。緊急の場面でこの語が増えるのは、登場人物が愚かだからではなく、時間の予算が有限だと知っているからです。原因の特定は後だ、いま出ろ——この順序は、正しさより打ち切りを優先した合理的な選択です。逆に、時間がいくらでもある場面でこの語を連発する人物を書けば、選択肢を数えすぎて自分で処理しきれなくなる性格が立ち上がります。臆病だとも慎重だとも書かずに済む。副詞ひとつが、その人物の計算資源の使い方を露出させます。

文: hakadoru.ai 編集部

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