選ぶ

【えらぶ】動詞

使い分けの視点

選択を、決断そのものと手を伸ばす動作に分けて描きます。「抜擢する」は人と役目に、「取捨」は残すものと捨てるものの対比に向きます。手に取った側だけでなく、棚へ戻した品や行かなかった道を残すと決断の重さが出ます。

同義語

同品詞の類義語

抜擢する文芸的
取るcolloquial
取り分ける

類義句

同品詞の慣用的言い換え

白羽の矢を立てる文芸的
手を伸ばすcolloquial
指名する

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

篩にかけるような文芸的
宝石を見分けるような文芸的
摘果をするような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

吟味して文芸的
慎重に
迷った末にcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

抜擢文芸的
取捨文芸的
指名

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

手に取る
名指しするcolloquial
振り分ける

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

棚へ戻した上着が残るエッセイ関連

例文: 少年が黒い外套で成人の儀へ向かうと、棚へ戻した上着が残る明るい部屋に母だけが立っていた。

えらぶの中に沈んでいる短い語

えらぶという三拍の中には、もっと短い語が沈んでいます。えると、よる。どちらも選という字を当てて書かれ、単独ではほとんど使われなくなりましたが、複合語の中には今も残っています。より好み、よりどりみどり、えり分ける、えりぬき。選りすぐりに至っては、えりすぐりともよりすぐりとも読まれ、二つの語形が同じ表記の下で同居したままです。同源とみられる語が三つ並び、そのうち一つだけが単独で生き延びた——語の生き残り方としては珍しくない形ですが、複合語の中に化石のように残った短い形のほうが、もとの動作をよく保存しています。

これらの複合が示しているのは、この語群がもともと手の動作に近かったということです。よりどりは寄り取ることであり、えり分けるは分けることです。米や豆から欠けたものを取り除く、繭を等級ごとに積み分ける——実際の作業の場では、良いものを取る動きと悪いものを外す動きは同じ一動作でした。目で見比べて決めるという抽象的な工程は、後から前面に出てきた面だと考えられます。

作業としての側面は、印刷の現場にも残りました。活版印刷で原稿どおりに活字を集める工程は文選と呼ばれ、その担い手は文選工と呼ばれます。ここでも動きは手の動きで、職人は活字箱の前を歩きながら必要な字を拾っていく。選ぶという語が指しているのは、頭の中で行われる判断ではなく、正しい場所へ手を伸ばして持ち帰るまでの一連の身体動作です。この語が抽象的な決断の語として使われるようになったのは、そうした作業の場を語がいったん離れてからのことでしょう。

漢字の側にも分業があります。選は辵と巽から成る字で、字書では人をそろえて送り出すことと関係づけて説明されることがあります。択は手偏を持ち、二つのものを手元で見比べる動きに寄っています。撰もまた手偏の字ですが、日本語では文章を選び整える意に偏り、撰者・撰集といった語に残りました。日本語ではこれら複数の字を一つの訓が引き受けたため、字を替えるだけで意味の焦点を移す書き方が可能になっています。同じ読みのまま、手の動きにも編集にも寄せられる。

語の芯にあるのは、おそらく残す側ではなく捨てる側です。えり分けるは分ける動作であって取る動作ではありません。二つのものから一つを取るとき、それが選択と呼べるのは、取らなかった一つを認識している場合に限られます。認識がなければ、それは単に手が届いたものを取ったにすぎない。目の前に一つしかないものを取る行為を選択と呼ばないのは、この条件が満たされないからです。

作中で人物に何かを選ばせるとき、選ばれた側だけを書くと、その場面は選択になりません。手に取らなかったものを一行でも書き添えれば、同じ動作が決断に変わります。二着の上着のうち、明るいほうを畳んで棚に戻した——それだけで、人物がどんな場に向かうつもりかが読者に伝わる。捨てられた選択肢は、選ばれたものより多くの情報を運びます。

選択を書くとは、捨てられたものを書くことである。手が伸びた先ではなく、伸びなかった先に人物の輪郭がある。

文: hakadoru.ai 編集部

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