賢い

【かしこい】形容詞

使い分けの視点

「賢い」は人物だけでなく、選択や道具など知性が現れた結果も修飾できます。「頭が切れる」は処理の速さ、「利発な」は若者の理解力、「抜け目ない」は自己利益への注意まで含みます。連用形の「賢くも」は語り手の評価を前面に出すため、視点に合わせます。

同義語

同品詞の類義語

聡明な文芸的
利発な文芸的
頭が切れるcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

機知に富む文芸的
目から鼻へ抜けるcolloquial
抜け目ない

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

辞書のようなcolloquial
磨かれた刃のような文芸的
泉のように湧く文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

機敏に
抜かりなく
如才なく文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

機転を利かせる
見抜く
察知する文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

才気文芸的
聡明さ文芸的
機転

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

末恐ろしいほどの文芸的
恐ろしく頭が回るcolloquial
小憎らしいほど利発なcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

賢くもエッセイ関連

例文: 彼女は賢くも撤退した、と語り手が評した瞬間、判断への是認が地の文へ表れた。

「賢く」が二度働く——一つの活用形が担う二つの層

連体修飾のなかで、主格の助詞が「の」に入れ替わる現象があります。「頭がいい人」は「頭のいい人」と言い換えられる。「足が速い選手」は「足の速い選手」になる。ところが「賢い人」には、この入れ替えの相手がいません。交替の余地がないのは、この形容詞が主語を一つしか要求しないからです。「頭がいい」は、人という主語と頭という主語が二重になった構文で、象は鼻が長い、という例文で知られる型に属します。内側の主語が連体節に入ると「の」に替わる余地が生まれる。「賢い」にはその内側がない。意味はほとんど重なるのに、統語の骨格が違う。この骨格の差から何が派生するかを追ってみます。

まず、修飾できる対象の広がりが変わる。「頭がいい」は身体部位を経由するので、原則として人と一部の動物にしか使えません。「頭のいい判断」は座りが悪い。一方こちらの形容詞は、人にも動物にも、判断や選択や道具にも掛かります。「賢い選択」「賢いやり方」——ここで主語の位置に来ているのは、賢さの持ち主ではなく、賢さが現れた結果のほうです。属性が、それを担う者から、それが表れた出来事へ移っている。文法の側から見れば、席が一つしかない構造は、その席に何を座らせてもよいという自由度を与える。席が二つあると、内側の席が身体に固定されてしまう。

連用形に移ると、非対称がもう一つ出てきます。「賢く立ち回る」は様態で、立ち回り方が賢いという意味です。ここまでは素直。ところが「賢くも身を引いた」になると、賢いのは身の引き方そのものではなく、そう判断したことへの話し手の評価に近づく。同じ連用形が、節の内側で動作を修飾する層と、節の外側から出来事全体を評価する層の、二つを担っている。「賢明にも」が固定表現として残っているのは、この外側の用法が独立して安定した名残だと考えられます。「も」が付くと外側へ押し出される振る舞いは、この語に限りません。「運悪く」「愚かにも」も同じように動く。

ここで自分の整理に引っかかりが出ます。二層あると言ったが、境目は本当に切れているのか。「賢く逃げた」は様態にも評価にも読める。文脈を足せば片方に寄るだけで、形そのものは中立です。層は形式に刻まれているのではなく、読みの側が決めている——そう言い直したほうが正確でしょう。ただし、それでも「も」が付いたときに評価読みしか残らないという非対称は消えません。曖昧さのほうが初期値で、標識が一つ加わると一方向に固定される。文法が決めているのは分岐そのものではなく、分岐を閉じる装置のほうだった、という順序になります。

人物にこの語を与えるときに効いてくるのも、たぶんそこです。地の文で「賢く立ち回った」と書けば、行動の描写にとどまる。「賢くも」と一語替えれば、語り手がその行動を是認したことになり、語り手の立ち位置まで文面に出てしまう。三人称の語りで評価を伏せておきたい場面では、この一音の差が効く。逆に、語り手をはっきり人物の側に立たせたい場面では、あえて外側の形を選べばよい。修飾語の選択は、程度の調整であると同時に、誰が誰を見ているかの申告でもある。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →