薔薇のような

【ばらのような】形容詞句

使い分けの視点

「薔薇のような」は、色、香り、華やかさ、棘のどれを似た点とするかを周囲へ委ねる比喩です。頬や唇なら色が立ち、性格なら棘の読みが近づきます。使い古された華やかさだけで済ませず、後続の名詞や受け手の反応で、どの属性が働いたかを示します。

同義語

同品詞の類義語

緋色めいた文芸的
花弁のような
深紅みたいなcolloquial
紅蓮めく文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

棘を秘めたような文芸的
香りまとうような文芸的
幾重にもほどけるような文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

椿のような文芸的
石榴を割ったような文芸的
夕焼けに染まったような

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

艶やかに文芸的
華やかに
甘く香って文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

頬を染める
棘を孕む文芸的
華やぎ立つ文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

深紅の花弁文芸的
棘ある花文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

息を呑むほど艶やかな文芸的
毒にも蜜にもなりそうな文芸的
傷つけそうなほど美しい文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

棘を隠した笑顔エッセイ関連

例文: 棘を隠した笑顔に気づき、王子は差し出した手を静かに下ろした。

属性を指さない比喩が、それでも通じてしまう理由

「薔薇のような人ですね」と言われた人物が、それを褒め言葉として受け取るかどうかは、その場の何が決めているのでしょうか。色のことか、香りのことか、豪奢さのことか。あるいは棘のことを言われたのだと受け取る余地も、この比喩には常に残っています。直喩は「AはBに似ている」と述べるだけで、どの点で似ているのかを指定しません。形式の上では、指定を省いているのではなく、そもそも指定する場所がない。似ているという述語には、似ている次元を書き込む欄が用意されていないのです。

語用論では、この種の情報不足がかえって推論を起動させると考えます。会話には、必要な情報を必要なだけ提供するという緩やかな約束がある。話し手がそれをあからさまに下回ったとき、聞き手は「不注意だ」とは判断せず、「何かを言外に伝えようとしている」と読む。グライスが量の格率と呼んだものの、典型的な使われ方です。属性を伏せた比喩は、聞き手に穴埋めを委ね、その穴埋めの責任も一緒に渡してしまう。だから褒めたつもりが刺さることがあり、刺したつもりが褒め言葉として通ることもある。責任の所在が曖昧になること自体が、この形式の機能なのかもしれません。

ここで自分の観察に異議を唱えておきます。実際の文章で、この比喩がそこまで宙に浮くことは稀です。頬に掛かれば色の話になり、香りに掛かれば匂いの話になる。人生に掛かれば華やかさの話で、性格に掛かれば棘の話です。穴は思ったほど開いていない——決めているのは後続の名詞であって、聞き手の自由裁量ではありません。それでも残るものがある。その決定を担っているのは語の意味ではなく、花についての世間並みの知識だということです。薔薇に棘があると知らない読者には、棘の読みは起動しません。比喩は言語の内側だけでは完結しない。

もうひとつ、直喩と隠喩では発話としての性格が違います。「彼女は薔薇だ」は断定で、外れていれば話し手の責任になる。「彼女は薔薇のようだ」は提案で、話し手には撤退路が残っています。似ていると言っただけで、同じだとは言っていない。この退路の確保は、丁寧さの装置としても働きます。強い評価を下すとき、直喩は角を落とす。近い形式を並べてみると差が見えてきます。「薔薇めいた」は話し手の判断が前に出て、押しつけがましくなる。「薔薇のようなもの」まで緩めると、今度は評価そのものが逃げていく。ヘッジの強さには段階があり、人物同士の力関係を書く場面では、どの段階を使わせるかがそのまま関係の描写になります。

さらに、この比喩には自己言及的な逃げ道もあります。使い古された表現だと書き手が承知している場合、言及の形に切り替えることができる。薔薇のようだ、と言えばそれまでだが——と前置きしてから使えば、陳腐さの責任は言葉のほうへ移り、話し手はその外側に立てる。語用論的にはかなり特殊な操作です。表現を使いながら、同時にその表現を評価してみせる。

創作の実務としては、扱いの難しい表現です。褒め言葉としては使い尽くされていて、地の文に置くと語り手の語彙が浅く見える。ただし、それは欠点としてだけ使えるわけではありません。会話文の中で登場人物に言わせたとき、この比喩は話者について多くを語ります。とっさに花を持ち出す人物、その中でも最も手垢のついた花を選ぶ人物、そしてそれを言われた側がどこを聞き取るか。陳腐な比喩は、誰が口にするかを決めた瞬間に、陳腐さごと情報になります。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →