縋りつくように

【すがりつくように】副詞句

使い分けの視点

「縋りつくように」は、実際に身体を預ける動作と、望みや言葉へ依存する比喩を重ねる様態句です。必死さだけを強めると主節の動きが薄れるため、何へ手を掛け、どれほど重さを預けたかを描きます。懇願と救命では切迫の種類も分けて選びます。

同義語

同品詞の類義語

しがみつくように
取りすがるように文芸的
頼り込むように文芸的
抱きつくように

類義句

同品詞の慣用的言い換え

命綱を握るように文芸的
頼みの綱を握るように文芸的
助けを求めるように

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

必死に
懸命に
切に文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

しがみついて
頼り込んで
頼みすがって文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

懇願の趣で文芸的
依存の調子で

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

藁にもすがる心地で文芸的
懇願の色を浮かべて文芸的
切なげに頼って文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

離れがたい手エッセイ関連

例文: 離れがたい手を命綱から外し、登山者は仲間へ先に渡した。

訳すと消える層——様態を外に立てる構文について

英訳の候補を並べると、この副詞句はまず cling to に落ち着きます。ただし cling は接触が続いている状態を指す語で、掴んだ瞬間の力を言いたければ clutch、届かないものへ手を伸ばす失敗込みの動きなら grasp at が近い。ドイツ語なら sich klammern an が対応します。どの言語も語彙は揃っているのですが、対応の仕方が食い違う。英語は持続と瞬間を別の動詞に振り分け、日本語側は一語で両方をまたいで、必要なら補助的な要素で調整します。分節の切れ目が言語ごとに違うだけだ、と言えばそれまでですが、翻訳で失われるものはもう少し別のところにあります。

まず語そのものの二重性を見ておきます。この動詞は、物理的に体重を預ける動作と、他人や事物に依存する状態の両方を指します。命綱に体を預けることと、遠縁の親戚を頼ることが、同じ語で言える。英語にも比喩用法はあり、希望や過去の栄光に cling する言い方は普通です。違うのは、日本語側では「〜つく」という複合の後部要素が接触の強度を上乗せしている点で、離れがたさが動詞の内部に組み込まれている。訳語を選ぶ段階で、この上乗せ分は消えるか、副詞で補うほかなくなります。

しかし本題は末尾の「〜ように」のほうです。この形が付いた時点で、実際にすがっている人物は文中にいなくなります。ある動作を、別の動作の様態として外から掛ける。言い換えれば、日本語は様態を独立した層として文の外側に立てることができ、その層は主節の動作と論理的に切り離されています。英語で as if を使えば近い形は作れますが、多くの場合は分詞や副詞に吸収され、主節の動詞と一体化してしまう。層が畳まれるわけです。原文で二段構えだったものが、訳文では一段になる。

逆向きに見ると、事情はもっとはっきりします。英語の小説を日本語に訳すとき、この種の様態句は原文にない場所にまで湧いて出ます。原文では動詞一語で処理されていた動作に、訳者が様態の層を足して補うためです。手が届く器がある以上、使ってしまう。明治以降の翻訳文体を通じて、この型の副詞句が日本語の書き言葉に大量に流入したという見方がありますが、どこまでが翻訳の影響でどこからが在来の用法かを切り分けるのは簡単ではありません。確実に言えるのは、現代の日本語の書き手が、話し言葉では滅多に使わないこの型を、書く段になると自然に手に取るということです。

訳しにくさの所在は語彙ではなく構文の側にある、というのがここでの結論です。同時に、これは書く側への警告にもなります。層を立てられるということは、立てすぎられるということでもある。様態の副詞句を重ねた文は、主節が何をしたのかを曖昧にしたまま、印象だけを積み上げてしまう。一文に一層、段落に数層まで——それを超えると、読者は主節を探しながら読むことになります。外に立てられる構造を持っているのは日本語の資産ですが、資産は使い方を決めておかないと目減りする。

文: hakadoru.ai 編集部

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