目を奪う

【めをうばう】動詞句

使い分けの視点

「目を奪う」は注意を排他的に取り上げる強い表現です。「魅了する」は快い引力を、「視線をさらう」は瞬発性を、「圧巻」は評価を強めます。奪われた瞬間だけでなく、元の作業へ戻れたか、何を忘れたかを書くと強度が具体化します。

同義語

同品詞の類義語

魅了する
見惚れさせる文芸的
視線を釘付けにする
魅入らせる文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

視界を独占する文芸的
釘付けにするcolloquial
視線をさらう文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

万華鏡のような輝き文芸的
稲妻のように文芸的
夢のような

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

鮮やかに
華やかに

体言的言い換え

用言を体言に変換

魅了
圧巻文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

観る者を釘付けにする文芸的
視線を一身に集める

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

注意の割り込みエッセイ関連

例文: 彗星という注意の割り込みのせいで、観測員は本来追っていた衛星を見失った。

割り込みには優先度がある——注意という単一資源

計算機の中央処理装置は、原則として一度に一つの命令列しか実行できません。それでも複数の仕事が同時に進んでいるように見えるのは、実行権を細かく切り替えているからです。この切り替えのうち、動いている処理から強制的に実行権を取り上げる方式を、プリエンプションと呼びます。訳語としては横取りや先取りが当てられてきました。取り上げられた側は、自分が中断されたことを知らされないまま止まる。この語感は、視覚の話に持ち込んでも、ほとんど補正なしで通用します。

日本語には、視線を集める事態を表す言い方がいくつもあります。集める、引く、留める、注がれる。これらはどれも、視線を分割可能な量として扱っています。半分だけ集めることも、複数の対象に配ることもできる。ところが取り上げる側の語だけは、資源を排他的に扱う。同時に二人が持つことはできず、一方が得れば他方は失う。語彙が暗黙のうちに資源モデルを含意しているわけで、選ばれた動詞の違いは、注意をどういう性質のものとみなすかの違いに対応しています。心理学でも、視覚的な注意には容量の限界があり、選択が避けられないという考え方が広く共有されています。

割り込みの仕組みを、もう少し借りてみます。実際の計算機では、割り込みには優先度が設定されています。低い優先度の割り込みは、より重要な処理の最中には保留される。さらに、どうしても中断されては困る短い区間には、割り込みを禁止する仕組みが用意されています。臨界区間と呼ばれる領域です。物語の中でも、同じ構造がそのまま観察できます。人物が極度に集中しているとき、あるいは生存に関わる作業の最中には、どれほど華やかなものが現れても視線は動かない。逆に、手持ち無沙汰でいるときには、些細な色の違いでも注意が移る。何に注意を取り上げられるかは、対象の強度だけでは決まりません。そのときの人物が、どの優先度で何を処理していたかで決まる。

もう一つ、実装の側から取れる比喩があります。実行権を切り替えるとき、計算機は元の処理の状態を保存し、後で復元します。この保存と復元には無視できない時間がかかり、切り替えの費用と呼ばれます。切り替えが頻繁すぎると、仕事そのものより切り替えに時間を食われる。人間の注意にも同種の費用があると考えられていて、中断された作業に戻るには、中断されなかった場合には不要だった手間が要ります。ここが、小説の描写でしばしば省略される部分です。視線を持っていかれる場面は丁寧に書かれるのに、そこから元の思考へ戻る過程はたいてい書かれない。

しかし、戻る過程にこそ情報があります。何行かけて戻れたか、戻ったときに前と同じ状態だったか、そもそも戻れなかったか。これらは、その人物がどれだけ深く没入していたかを逆算させます。一瞬で復帰したなら、元の作業は浅かった。三段落かけても戻れないなら、割り込みの側が優先度を書き換えてしまったことになります。取り上げられた瞬間を書くのは誰でもできる。差がつくのは、取り上げられた後に何が返ってこなかったかを書けるかどうかです。失われた分量を測れば、奪ったものの大きさは書かなくても伝わります。

文: hakadoru.ai 編集部

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