密かに

【ひそかに】副詞

使い分けの視点

人の動作なら「こっそりと」「人目を忍んで」、内面や計画なら書き言葉の「密かに」「内々に」が合います。「水面下で」は組織的な進行、「ひそやかに」は音や気配の弱さを示します。隠す主体と、観察者から隠れて進む事態を分けます。

同義語

同品詞の類義語

こっそりとcolloquial
内々に
そっと
陰で

類義句

同品詞の慣用的言い換え

誰にも知られず
人目を忍んで文芸的
影に隠れて

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

影法師のように文芸的
夜陰に紛れるように文芸的
猫のような足音で文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

人目を忍ぶ文芸的
影を潜める文芸的
忍び寄る

体言的言い換え

用言を体言に変換

内緒でcolloquial
水面下で

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

そろりそろりとcolloquial
ひそやかに文芸的
陰ながら文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

無生物主語エッセイ関連

例文: 密かに亀裂が広がるという無生物主語の一文が、塔の崩落を予告した。

後ろに来られる動詞、来られない動詞

紙の左に「密かに」と書いて、その右に続けられる動詞を思いつく順に並べてみたことがあります。思う。決意する。恋する。期待する。準備する。笑う。願う。誓う。十個ほど出たところで手が止まりました。並んだものを眺めると、はっきりした偏りがある。ほとんどが内面で起きる動詞です。外から見て動作として観察できるものは、笑うと準備するくらいしか混じっていない。

比較のために、隣の欄に「こっそり」を置いて同じことをすると、出てくる顔ぶれが入れ替わります。食べる。抜け出す。覗く。持ち出す。近づく。今度は身体の動きばかりで、思うや誓うは出にくい。逆向きの検査も効きます。「密かに食べる」は言えなくはないものの、どこか気取って聞こえる。「こっそり決意する」に至っては、決意という語のほうが居心地悪そうにしている。直後に来る語の分布が、二つの副詞でほとんど重なっていない。似た意味だと説明される語ほど、実際に並べてみると共起の顔ぶれで分かれます。

ここで自分の整理に穴が見つかりました。「密かに進行していた計画」「密かに広がる噂」といった言い方があります。進行するも広がるも内面の動詞ではない。しばらく眺めて気づいたのは、これらの主語が人ではないことでした。人が主語のとき、隠している相手は他人であり、当人は自分の状態を知っている。無生物が主語のとき、隠れているのは観察者からであって、隠す主体はどこにもいない。同じ副詞が、隠す側と隠れている側の両方を引き受けている。二つの用法は連続しているようで、実は誰が知っているかという点で正反対です。

もうひとつ、この語は書き言葉に寄っています。会話で「密かに思ってた」と言うことはできますが、口にした瞬間に少し文章の匂いがする。日常の話し言葉では「こっそり」か「内心」が出てくることのほうが多いはずです。文体の位相が高いほど、共起できる動詞は抽象へ寄る——この二つは連動していて、どちらかだけを動かすことはできません。

表記の揺れも、共起と絡んでいるように見えます。仮名で書くか漢字を当てるかで、後ろに並ぶ語の顔ぶれがわずかに動く印象がある。仮名書きのほうは柔らかく、和語の動詞と隣り合いやすい。漢字を当てると硬くなり、進行する、企てる、といった語と組みやすくなる。同じ語なのに、表記を変えただけで隣に立てる語が入れ替わるのだとすれば、共起として観察されているのは語よりも文字列です。検索の側から見れば当たり前の話ですが、書く側にとっては、表記を選ぶ手が共起を選ぶ手でもあるという意味になります。

実務に引き取ると、示唆はやや意外な方向に出ます。内面の動詞に付ける用法は、いわば既定路線です。密かに決意した、と書いても、読者は驚かない。情報として新しいものがほとんど乗っていないからです。むしろ働くのは無生物主語のほう、つまり誰にも気づかれずに進んでいるものを地の文で示すときでしょう。人物が隠していることを書くなら副詞を外し、隠しきれていない動作を一つ置くほうが早い。副詞は、隠す人ではなく、隠れている事態のために取っておく。

文: hakadoru.ai 編集部

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