守る

【まもる】動詞

使い分けの視点

防衛するは外敵への備え、庇護するは力の差を前提にした保護、かばうは目前の危険を身で受ける動きです。守る対象から離れた人物には大きな宣言をさせず、見回りや補修など実際に目が届く行動で示します。

同義語

同品詞の類義語

防衛する文芸的
庇護する文芸的
かばうcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

盾となる文芸的
骨を折る
身を挺する文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

岩壁のような文芸的
翼を広げるような
城壁を築くような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

身を挺して文芸的
命がけでcolloquial
全力で

体言的言い換え

用言を体言に変換

防衛
庇護文芸的
colloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

死守する文芸的
食い止める
寄り添うcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

見守るエッセイ関連

例文: 孵化室の灯りが落ちるまで、研究員は殻の震えを見守るつもりだった。

目を離した瞬間に破れるもの

古い和語の「まもる」には、じっと見る、目を離さずにいる、という意味の用法があります。「目守る」という当て字が使われることもあり、語の成り立ちを「目」と「守る」の複合に求める説が知られています。ただし語源説は一つに定まっているわけではなく、複数の見方があると書いておくのが誠実でしょう。それでも、見ることと守ることが同じ語で受け持たれていた時期がある、という事実自体は動かしにくい。ここから何かが引き出せそうな気がして、しばらく手を止めていました。

思い当たるのは、この重なりが日本語だけの事情ではないことです。英語の watch は見張る意味と番をする意味を両方持ちますし、guard や ward の系列も、視線と防御のあいだを行き来しています。番人が武器ではなく目を使う職業であった時代が長かったのだとすれば、これは言語の偶然ではなく、仕事の構造が語に沈殿した結果と考えられます。城壁も鍵も、結局は誰かが見ていなければ機能しない。

漢字の側からも一筆入れておきます。「守」は屋根を表す部分と、手に関わる部分から成るとされ、屋根の下で職務を執り行うという方向の説明がなされます。実際、この字は日本語では役職名にも使われてきました。和語の「まもる」に「守」の字を当てたのは、視線の語に管掌の語を重ねた操作だったことになります。見ることと、任されていること。片方は感覚で、もう片方は制度です。ひとつの表記のなかに、由来の違う二本の筋が同居している。

ここで、自分の推論の危うさを言っておく必要があります。語源から現代語の意味を説明しようとするのは、しばしば誤りを生みます。語の来歴と、現在その語が担っている意味は別の層にあり、前者は後者を保証しません。いま「守る」を使う人が視線を意識しているかといえば、していない。約束を守る、規則を守る、といった用法では、見張るという成分はほぼ消えています。だとすれば、視線の話はただの由来談で終わりかねない。

それでも消しきれないものが残ります。「守る」は、対象が視界から出ると急に不安定になる語です。約束を守るとき、人は自分の行動を自分で監視している。規則を守るとき、規則の側が見張られる位置にいる。誰かを守ると言うとき、その誰かがどこにいるか分からなくなれば、守っているという言明は空転する。近い意味の「防衛する」「庇護する」は、対象が視界外にあっても成立します。国土は見えなくても防衛できるし、庇護は制度として遠隔から働く。「守る」だけが、距離を詰めることを要求してくる。

この性質は、物語の構造にそのまま流用できます。守ると宣言した人物を、対象から引き離す。距離が伸びるほど、宣言は嘘に近づいていく。本人は何ひとつ裏切っていないのに、見ていないという一点だけで機能が失われる——この落差は、裏切りを書くより静かで、たいてい残酷です。目を離した瞬間に破れるという性質は、語の来歴が残した癖なのか、それとも守るという行為そのものの形なのか、決めきれないまま書き手は使うことになります。

文: hakadoru.ai 編集部

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