尊い

【とうとい】形容詞

使い分けの視点

「尊い」は、容易に損なってはならない価値を対象へ認める形容詞です。「神聖な」は宗教的な不可侵性を、「崇高な」は精神的な高さを、「畏れ多い」は評価する側の低い姿勢を示します。「尊厳」「威徳」のような名詞や「敬う」「拝する」のような行為と分け、誰が何を失いたくないのかを具体化します。

同義語

同品詞の類義語

神聖な文芸的
崇高な文芸的
畏れ多い文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

冒しがたい威厳を放つ文芸的
言葉を失わせる
頭を垂れるほかない文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

掌に灯した火のような文芸的
祭壇の光にも似た文芸的
静謐な聖域のような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

厳かに文芸的
うやうやしく
粛然と文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

敬う
拝する文芸的
畏敬する文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

神聖性文芸的
威徳文芸的
尊厳

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ああ、と誰かが息を呑んだ文芸的
そっと膝を折る文芸的
頭の中が真白になるcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

焼け残った手紙を守る手エッセイ関連

例文: 焼け残った手紙を守る手を見て、兵士はその一枚が金貨より重いと悟った。

「たっとい」と「とうとい」のあいだ——敬意を宿す語形

古い文章の語形を現代の声で読むと、一つの形容詞に複数の時間が重なります。現代語の「とうとい」には「たっとい」という形もあり、古語では「たふとし」と書かれる形が知られています。音は世代を経て変わっても、容易に近づいたり損なったりしてはならない価値を表す核が続いてきました。語源を考えるとき、最初の一地点だけを探すより、語形がどう受け継がれ、どの仲間を作ったかを見るほうが確かな場合があります。

同じ語族には「尊ぶ」「尊敬」「尊厳」などがあります。「尊ぶ」は価値を認める行為、「尊敬」は他者への態度、「尊厳」は侵してはならない価値を名詞として捉える。それに対し「尊い」は、対象の性質を評価する形容詞です。「命は尊い」「尊い犠牲」のように名詞へ付き、話し手が高い価値を置く。ただし価値の理由までは語の内部に書かれていません。宗教的な聖性、倫理的な重要性、希少な関係など、文脈が根拠を補います。

表記では「貴い」との近さが問題になります。「貴」は身分や価格、希少さを連想させやすく、「尊」は敬い重んじる態度を前へ出しやすいものの、実際の用法は重なります。音声では区別されないため、漢字は作者が意味の焦点へ加える注釈です。人命を「尊い」とするか「貴い」とするかで、守るべき価値と得難い価値のどちらを強く見せるかが変わる。仮名の「とうとい」なら、その分類を読者へ委ねられます。

近年のくだけた会話では、人物同士の親密な振る舞いや好ましい関係を評して、この語を感動詞に近く使うこともあります。荘重な祭壇から日常の一場面まで使用域が広がっても、「見返りなく大切にしたい」という評価が橋になります。ただし地の文へ無造作に入れると、語り手が対象を崇拝しているのか、登場人物の口調を借りているのかが曖昧になる。引用符、自由間接話法、台詞といった層を選ぶことで、評価者を示せます。

小説で価値を説得的にするには、形容詞を先に宣言するだけでなく、何を失いたくないのかを具体化したい。焼け残った手紙、名もない人の一日、敵同士が守った約束——対象が置かれた関係が価値の根拠になります。古い語形から現代の軽い感嘆まで、この語が保ってきたのは価格表では測れない序列です。語源を創作へ取り込む際は、古形が現代語より純粋だったと考えない注意も要ります。古い時代にも身分、宗教、日常の評価が重なり、用例ごとに価値の根拠は異なったはずです。「たっとい」という別形を人物の口調へ置くなら、地域や世代を一語だけで決めつけず、周囲の語彙と合わせたい。反対語も一つではなく、卑しい、軽い、ありふれたなど、何を下げるかで対立軸が変わります。語形の履歴は価値観の答えではなく、問いが長く継承された証拠です。その選択は現在の話者の価値観も映します。「尊い」と書く瞬間、作者は対象を高い棚へ置くだけではない。誰が頭を下げ、誰が守り、誰にはその価値が見えないのかまで、物語の倫理を配置します。

文: hakadoru.ai 編集部

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