喚く

【わめく】動詞

使い分けの視点

大声の類語は音量だけの一直線には並びません。統制の有無、相手への攻撃性、泣き声との結びつきで座標が変わります。「喚く」は制御を失った側へ寄るため、単なる強調として「叫ぶ」から置換すると人物への評価まで変わります。誰の視点がその声を採点しているかも意識します。

同義語

同品詞の類義語

怒鳴る
叫ぶ
吠える文芸的
がなるcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

大声を上げる
声を荒げる
啖呵を切る文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

癇癪を起こすようなcolloquial
噛みつくような
狂乱するような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

けたたましく
大声で
がなり立ててcolloquial

体言的言い換え

用言を体言に変換

怒声文芸的
罵声文芸的
金切り声

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

騒ぎ立てる
当たり散らすcolloquial

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

泣き喚く

例文: 城門が閉じると、取り残された子どもが母を求めて泣き喚く。

一直線に並べられるか——類義語と半順序

囁く、話す、叫ぶ、喚く——この四つを一本の線の上に並べられるでしょうか。辞書の語釈は「大声で叫ぶ」といった形をとることが多く、それを信じるなら、叫ぶより右に置けば済むはずです。ところが実際の用例を集めていくと、右へ動いた分だけ声が大きくなっているようには見えず、別の何かが一緒に動いています。何が動いているのかを言葉で名指す前に、順序の形のほうを疑ったほうが早い気がします。

数学で順序を扱うとき、全順序と半順序を区別します。全順序は任意の二要素が必ず比較できます。半順序は反射律・反対称律・推移律だけを要求し、比較できない対があってもかまいません。音量という一つの量だけを見るなら、これらの語は全順序に載ります。しかし語のほうには、話し手に統制が効いているかどうかという別の成分が混じっています。二つの成分を組にして、両方の座標が大きいときにだけ大きいと定める順序を入れると、比較できない対が現れます。中程度の音量で統制を失った状態と、大音量で統制を保った状態は、どちらが上とも言えない。

具体で確かめます。「低い声で怒鳴る」は成立するのに、「静かに喚く」は据わりが悪くなります。前者は音量が独立に動かせるのに対し、後者では音量が高い側に張り付いていて動かせず、かわりに制御のほうが動きます。複合語の作り方も対応していて、「泣き喚く」は自然に立つのに、泣くことと怒鳴ることを直接くっつけた形は落ち着きません。感情の破れ目の側にある語は、同じ側にある動詞としか組めないのだと考えると、この分布は説明できます。副詞との相性も同じ向きに揃っていて、統制を含意する修飾語を前に置くと途端に落ち着かなくなります。二つの座標のうち一方が固定されている語は、修飾を受け付ける方向も片側に偏る——並べ方の話が、そのまま結びつきやすさの話になっています。

自分で反論しておきます。二次元で足りるのでしょうか。「吠える」は統制の有無どちらでも使え、しかも動物の比喩という別の層を持っています。次元を足せば記述の精度は上がりますが、足すほど比較できない対が増え、順序としての情報量は減っていきます。極端まで行けば、どの二つも比較できない集合になり、順序は消えます。すべての違いを保存する記述は、何一つ並べられない記述と同じです。実用になる次元数は、おそらく二つか三つでしょう。多くしないことが、記述の目的そのものに含まれている。

そう見てくると、類義語の一覧を強さの順に読む習慣のほうが問題だと分かります。ある語を別の語へ置き換えるとき、動いているのは一本の目盛りではなく、いくつかの座標です。「叫んだ」を書き替えれば、変わるのは音量ではなく、その人物が自分を保っていられるかどうかについての評価になります。書き手にその意図がなくても、地の文はそこで人物を採点します。強い語を選んだのではなく、別の座標へ移動したのだと考えておけば、選び直すときの手がかりも増えます。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →