他方

【たほう】接続詞

使い分けの視点

「他方」は同じ問題に第二の面を開き、対照、追加、同時進行のいずれかを示す硬めの接続語です。「一方」「対して」は共通軸を明確にし、「反面」は利点の裏の欠点に寄ります。「翻って」「別の側面では」は視点転換を強く告げるため、並べる二項が本当に同じ軸に属するかを確かめて使います。

同義語

同品詞の類義語

一方
片や文芸的
対して
反面

類義句

同品詞の慣用的言い換え

そのいっぽうで
もう片方ではcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

翻って文芸的
別の側面では文芸的
対比的に文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

同じ川を見る二つの岸エッセイ関連

例文: 同じ川を見る二つの岸で、兵と村人はそれぞれ異なる夜明けを待っていた。

二つ目の窓を開ける接続——「他方」を訳し分ける

一枚の報告書に「都市部では人口が増えた。他方、山間部では減った」とあれば、二文は対照として読まれます。しかし「研究は進んだ。他方、費用も増えた」なら、成果の裏にある負担を追加する響きもある。「他方」は単に次の文を置く印ではなく、同じ論点を別の側から見るよう求める接続です。翻訳では、原文に逆接があるか、同時進行があるか、二項を公平に並べるかを見なければ、一つの対応語へ固定できません。

英語なら on the other hand が近い場面もあれば、by contrast、meanwhile、whereas の構文が合う場面もあります。on the other hand は先に一方の側が提示される期待を持ちやすく、meanwhile は対立より同時性へ寄る。whereas は二つの節を一文内で対照させます。日本語では主語を省略した二文を「他方」でつなげられるため、英訳時には誰の状況かを明示する必要が生じることもある。接続語の翻訳は単語交換ではなく、文同士の関係と省略された項の復元です。

逆方向の翻訳でも注意が要ります。原文の however を毎回「他方」とすれば、単純な反論まで二側面の比較に見えてしまいます。「しかし」は前文への反対や予想外を広く示しますが、「他方」は比較する共通軸を要求しやすい。価格と品質、利益と危険、個人と組織のように、同じ問題を分ける軸があるかを確かめたい。「雨だった。他方、私は傘を忘れた」は出来事の連続であって、二側面としては不自然です。

物語では、接続の硬さ自体も翻訳対象になります。論説調の語り手なら自然でも、幼い人物の台詞に置けば借り物めいて聞こえるかもしれません。「でも」「その一方で」「片や」へ変えると、論理関係を保ちながら声の年齢や距離を調整できます。逆に、感情的な人物が突然「他方」と言えば、自分の心を報告書のように整理しようとする身振りにもなる。意味の等価だけでなく、発話者がどんな文章文化に属するかまで訳す必要があります。

二項対立を作る語だからこそ、世界を二つに切りすぎる危険もあります。都会と地方の間には多様な地域があり、賛成と反対の間には保留がある。原文が連続的な差を述べているなら、「他方」で鮮やかに二分することが歪みになりえます。翻訳後には、接続語だけを隠して二文の関係を読み直す方法があります。対立が内容から明らかなら強い標識は不要かもしれず、標識を外すと関係が消えるなら論理を補う語が要る。さらに訳文を原言語へ戻すつもりで要約し、contrastなのかadditionなのかsimultaneityなのかを一語で名付けると、選択のずれを発見しやすい。小説なら章の切替そのものが「他方」の役を果たす場合もあり、毎回明示すれば語りが論説的になります。第一の窓から見えないものを第二の窓で補うのか、第一の主張を第二が反転させるのか、同時刻の別地点へ移るのか。その関係を決めて初めて、接続語は訳文の論理を正しく支えます。

文: hakadoru.ai 編集部

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