主たる

【しゅたる】連体詞

使い分けの視点

主要なは構成上の比重、中心的なは位置や役割、肝要なは重要性を押し出します。主たるは公文書に近い硬さを帯びるため、会話に混ぜず、報告や規約など文体の温度がそろう箇所に限ります。

同義語

同品詞の類義語

主要な
中心的な
肝要な文芸的
枢要な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

中核となる文芸的
屋台骨を成す文芸的
根幹を成す文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

他ならぬ中心的な文芸的
まさに枢要な文芸的
言わば屋台骨の文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

書類の温度エッセイ関連

例文: 書類の温度を保ったまま、審問官は主たる原因を一行だけ読み上げた。

シュタルの三拍——硬い音はどこから来るのか

声に出してみると、この語は妙に角があります。シュ・タ・ル。拗音を一拍と数えて三拍、「主たる目的」まで続けると力の入る位置がはっきり分かれる。同じ意味で「おもな目的」と言い換えると、輪郭がほどけます。オ・モ・ナ。母音はどれも開いていて、子音は鼻音だけ。破裂音がひとつもない。ここに何かある気がするのですが、それが音の性質なのか、別のものが音のせいにされているのか、すぐには判じがたい。

音の側から見ておきます。シュタルには、無声の摩擦音と無声の破裂音が続けて現れます。息が二度せき止められる、あるいは狭められる。加えて母音がウ段とア段とウ段で、ウ段は日本語のなかでも唇の開きが小さく、こもりやすい。硬さや締まりの印象は、こうした調音の特徴から説明されることがあります。同じ型の語を並べると、傾向はもう少し見えてきます。堂々たる、確固たる、断固たる、燦然たる、毅然たる——濁音や促音、撥音を含む重い語が並び、やわらかい語がほとんど混ざりません。この「たる」は文語の助動詞の連体形が化石として残ったもので、後ろに続くのは体言に限られます。終止の形がない、という非対称も、この語が文中で長く伸びずに切れる感覚を助けているのかもしれません。

長さのほうも数え直しておきます。シュ・タ・ルで三拍。オ・モ・ナも三拍です。「主たる目的」まで伸ばせば、しゅ・た・る・も・く・て・きの七拍で、「おもな目的」も、お・も・な・も・く・て・きの七拍。拍の数はきれいに揃っていて、差はどこにもありません。硬さの正体は長さではない、ということになります。残るのは音の質のほうです。片方は無声の摩擦音と破裂音を含み、もう片方は鼻音しか子音を持たない。同じ寸法の器に、まるで違う種類の音が詰まっている。印象の差がここまで大きいのに、計れる量としては差が出ない——音象徴の話が扱いにくいのは、たいていこの型の食い違いのせいです。数えられるものを数えても、印象の根拠には届かない場合がある。

ただ、ここで自分の説明を疑っておきます。硬く聞こえるのは音のせいではなく、この形式が公文書や法令、報告書で使われ続けてきたからではないか。「主たる事務所」「主たる債務者」といった連なりを目にした経験が、シュタルという音に事務室の匂いを付着させている。だとすれば、原因は音韻ではなく使用域です。両方が同時に働いている、と見るのが穏当でしょう。音の硬さが硬い文書に選ばれ、選ばれ続けたことで硬さが強化される。往復のあるうちに、どちらが先かは決められなくなります。

先に並べた仲間の語には、もう一つ共通点があります。どれも二字の漢語で、和語が前に立った形はまず作れない。静かたる、緩やかたる、とは言えないわけです。意味の側の理由ではなく、この形式が漢語に接続する性質を保ったまま化石になったからでしょう。「主」は一字の漢語で、撥音も促音も長音も持たない。この系列のなかでは例外的に軽い部類に入ります。それでも硬く響くのは、同じ型に入る他の語の重さを、形式ごと引き受けているからかもしれません。語は単独で音を持つのではなく、同じ枠に収まる仲間の音まで背負って現れます。この枠が新語を受け付けないことも、硬さを保存する働きをしています。外来語を入れた形が作られない以上、仲間の顔ぶれは増えません。閉じた集合の一員であること自体が、その語の位置を古い側へ固定してしまう。

それでも音の側に残る手がかりがあります。「主要な」「中心的な」と比べると、シュタルは短い。四拍に届かない短さで、しかも撥音や長音のような伸びる要素を持たない。文のなかに置くと、そこだけ足が速くなります。長い修飾句を書き連ねた後にこの語を差し込むと、リズムが一度つまずく。逆に、短い文が続く場面で使うと硬さが目立ちすぎて、書き手の癖として読まれてしまう。速度の話として扱うほうが、印象論より手がかりが多く、直せる箇所もはっきりします。

小説のなかでの置き場所も、ここから決まります。地の文で使えば、その一文だけ書類の温度になる。だからこそ、報告書を読み上げる場面、査問の場面、感情を抜いた説明をする人物の口には正確に乗ります。逆に、動揺している人物にこの語を言わせると、動揺が嘘になる。音は意味を持ちませんが、どの部屋から来た語かという記憶は持っている。その記憶ごと、文のなかへ持ち込まれます。書き手が選んでいるのは語ではなく、部屋のほうです。

文: hakadoru.ai 編集部

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