とても
【とても】副詞使い分けの視点
「非常に」「極めて」は報告調で、後者ほど判定の厳密さを出します。「実に」「この上なく」は語り手の評価、「ことのほか」は予想との差、「格別に」は他との比較を含みます。「やたらと」は理由不明の多さ、「むやみに」は節度を欠く行為への否定を伴う点が重要です。
同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
「非常に」「極めて」は報告調で、後者ほど判定の厳密さを出します。「実に」「この上なく」は語り手の評価、「ことのほか」は予想との差、「格別に」は他との比較を含みます。「やたらと」は理由不明の多さ、「むやみに」は節度を欠く行為への否定を伴う点が重要です。
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。
例文: 老船医の「とても間に合わない」は否定と呼応する重い断定で、乗組員から甘い見通しを消した。
例文: 語り部は怪物の名の前で三拍を稼ぐように声を遅らせ、子どもたちが息をのむ間を作った。
程度を表す副詞を拍で数えてみると、妙な偏りが見えてきます。ずいぶんは四拍、きわめても四拍、ひじょうにも四拍で、じつには三拍です。四拍がずらりと並ぶなかで、いちばん無造作に使われている「とても」が三拍しかありません。数え終えたときに引っかかったのは長さそのものではなく、音の中身のほうでした。無声の破裂音が二つ並び、母音はオ・エ・オと続きます。促音もなければ撥音も長音もありません。程度を強める役目を負っているのに、音を歪ませる仕掛けを一つも持っていないのです。
比べてみると差は明瞭です。口語の強調語は、たいてい音のどこかを壊します。促音を割り込ませたり、母音を伸ばしたり、頭に一音節の語を貼りつけたりします。壊れた音が、話者の興奮を身体のレベルで担保しています。音韻的な逸脱は、内容を聞く前に強度を伝える早道です。ところがこの語は、標準的な三拍の枠にきれいに収まったまま、意味の上でだけ強調を主張します。言っていることと、音のふるまいが一致していない。漢語系の程度副詞にも似た事情はありますが、あちらは硬さという別の情報を音の側に持っています。字音語の連なりそのものが文体の位置を告げるからです。和語で、逸脱もなく、文体的な色もつかない——そういう位置に立っている程度副詞は、実はそう多くありません。
もちろん、口語では促音が入った形が広く使われます。だから歪む余地がないわけではない——ここで一度、自分の観察を疑いました。ただ、書き言葉に戻ってみると、促音形と非促音形はほとんど別語のように扱われています。地の文に促音形を落とすと、語り手の口調が急に若返ります。つまり二つは自由に交替しているのではなく、有標と無標で分業しています。そして無標であるということは、どんな文脈にも抵抗なく入れるということです。抵抗なく入れられる語は、繰り返し使われます。繰り返し使われた強調語は、強調として効かなくなります。強調表現が次々に新しい形へ乗り換えられていくのは、この摩耗があるからでしょう。ただ、乗り換えの対象になるのは有標の側です。無標の語は摩耗しても捨てられません。効かないまま、置き場所として残り続けます。
この摩耗には、意味の側の歴史も重なっています。この語はかつて打消しと呼応する形で使われ、とうてい及ばない、という含みを担っていました。「とても言い尽くせない」のように、後ろの否定とセットでなければ働けない副詞だったのです。肯定文で単に程度を強める用法が広まったのは近代以降だとされ、そのとき語は文法的な支えを一つ失いました。呼応相手のいる語は、単独では働けない代わりに、働くときには必ず相手が強度を保証してくれます。その支えを手放して自由になった結果、自力で立つ必要が生じた——そして音の側には、立つための足がなかった。二つの支柱がどちらも無いまま、意味だけで強度を主張し続けている状態が現在です。
実際の推敲では、この事情は拍で測ると扱いやすくなります。「とても静かな夜だった」は十二拍、この副詞を落とすと九拍です。削って文が引き締まるのは、意味が減るからではなく、三拍ぶん句が短くなって収まりが変わるからです。逆に言えば、拍を稼ぐために置いている場合もあります。息継ぎの位置を作りたい、直後の語を少し遅らせたい——そういう理由なら残す価値があります。この語を消すかどうか迷ったとき、強調が必要かと自問しても答えは出ません。声に出して、拍が足りているかを聞くほうが速いはずです。
文: hakadoru.ai 編集部
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