聞く

【きく】動詞

使い分けの視点

「聞く」は音の受信と質問の二方向を持ち、「先生に聞いた」のように格を省くと能動性まで曖昧になります。「耳にする」は偶然、「尋ねる」は質問、「聴く」は意識的な鑑賞へ寄ります。必要なら情報源に「から」を足し、常用外の「訊く」だけに頼らず格で意味を固定します。

同義語

同品詞の類義語

耳にする
尋ねる
訊く文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

耳を傾ける文芸的
耳に入る
耳を貸す

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

壁が耳を持つような文芸的
糸電話のようなcolloquial
耳朶を打つような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

じっと
そっと
うわの空で

体言的言い換え

用言を体言に変換

聴取文芸的
伝聞文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

聴く文芸的
聴取する文芸的
問う文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

情報源を明かすエッセイ関連

例文: 証人は情報源を明かす決意を固め、法廷にいた友人へ頭を下げた。

「先生に聞いた」が二通りに読める——格枠を共有する二つの動詞

「先生に聞いた」という六文字は、二通りに読めます。先生が情報の出どころである読み方と、先生が質問をぶつけた相手である読み方。前者では話し手は受け取る側に、後者では話し手は差し出す側に立っている。動きの向きが正反対なのに、格助詞は同じ「に」のままです。同じ形が反対向きの二つの事態を担うこの構造は、意味の多義というより、格枠の共有と呼んだほうが正確でしょう。

配置を並べてみると事情が見えてきます。ヲ格に立てるのは、受信の読みでは受け取った内容そのもの(噂を聞く、物音を聞く)、質問の読みでは尋ねた事柄(道を聞く、値段を聞く)です。ニ格に立つのは、受信の読みでは情報源、質問の読みでは相手。両方とも人ですが、役割は逆になる。曖昧を解くのはカラ格の有無で、「先生から聞いた」と言えば受信の読みに固定され、質問の読みは消えます。逆に「先生に道を聞いた」のようにヲ格が具体的な問いを埋めると、今度は質問の読みに固定される。曖昧なのは、格が省略されて枠に空きが残っているときだけです。

もう一つの枠が別語形で用意されています。「聞こえる」は、聞き手ではなく音のほうをガ格の主語に立てる。「遠くで鐘が聞こえた」は、誰が聞いたかを言わずに知覚の成立だけを述べる文です。「見る/見える」と平行した対応で、日本語は主要な知覚のうちいくつかに、意志的な形と自発的な形の対を持っています。ただし対応は全域にわたっていません。嗅覚には「匂う」という自発寄りの語がありますが、「嗅ぐ」との関係は聞く/聞こえるほどきれいに揃わない。触覚に至っては対がほとんど成立しない。知覚を等しく扱っているように見えて、文法の側の整備には偏りがある。

この自発形は命令形を拒みます。「聞け」とは言えても、「聞こえろ」は命令として機能しません。意志で起こせない事態は命令できない、という当たり前の制約が語形に現れている。受身にすると、また別の傾斜が出ます。「聞かれた」は多くの文脈で質問された意味に読まれ、受信の読みを取らせたいときは「聞かれてしまった」のように、意図せず届いてしまった含みを足す必要が出てくる——同じ受身形なのに、無標のときは片方の読みに寄る。二つの読みは対等に同居しているのではなく、活用形ごとに優劣が入れ替わっているわけです。

書く側にとっての実際的な帰結は、地の文で格を省いたときに現れます。会話文なら文脈が支えるので誰も困りませんが、地の文の「その話は昨日聞いた」は、聞かされたのか自分から尋ねたのかで人物の能動性が変わる。読者が数行戻って確かめる箇所は、たいていこの種の空いた格です。表記で分ける手もあります。質問の読みに「訊く」を当てる書き手は少なくありませんが、この字は常用漢字表に入っていないため、媒体によっては使えない。使えない場でも困らないように、カラ格を一つ足しておくか、動詞そのものを尋ねるに替えておく。格を一つ埋めるだけで消える曖昧を、字の選択に頼らないほうが安全です。

文: hakadoru.ai 編集部

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