目を伏せて

【めをふせて】副詞句

使い分けの視点

「目を伏せて」は視野を下げ、相手からも瞳を隠した状態で後続動作を包みます。「視線を逸らして」は方向転換を、「瞼を閉ざして」は遮断を、「顔を俯けて」は頭部全体を強めます。隠す意図を断定せず、身体が下がった結果から内面を読ませます。

同義語

同品詞の類義語

視線を落として
瞼を閉ざして文芸的
睫毛を落として文芸的
瞳を落として文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

視線を逸らして
顔を俯けて
瞼を下ろして文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

そっと
静かに
うつむきがちに

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

視線を落とし黙り込んで
瞼を閉じ静止して文芸的
睫毛を伏せ俯いて文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

伏目の佇まいで文芸的
謙譲の趣で文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

睫毛をそっと落として文芸的
瞳を地面に向けて
恥じらいを浮かべ視線を落として文芸的

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

低くなる目エッセイ関連

例文: 低くなる目が秘密を隠したのか、ただ眩しさを避けたのか、語り手は決めなかった。

下げることと隠すこと——「伏せて」の順序をたどる

「伏せる」という動詞が何を目的語に取るか、思いつくまま並べてみると、妙な広がりがあります。本を伏せる。カードを伏せる。名前を伏せる。身を伏せる。鍋の蓋を伏せる。どれも「表を下に向ける」か「見えなくする」かのどちらかに寄っていて、その二つは重なりながらも同じではありません。本を伏せれば隠れるのは中身です。名を伏せれば隠れるのは情報です。では目を伏せたとき、隠れているのは何なのか。

ここで一度止まります。目を伏せた人は、自分の視野を失います。同時に、向かい合っている相手からは、その人の目が見えなくなる。隠す働きが二方向に出ている。本やカードなら、隠す側と隠される側ははっきり分かれていました。目の場合だけ、それが両方向に働きます。伏せた本人は見なくなり、相手は見られなくなる。この二重性は動詞の意味からは出てきません。目という器官が、入力と出力を同じ一点で兼ねているせいです。

字の側からも見ておきます。「伏」は人偏に犬を書きます。人の傍らで犬が身を低くする姿を表したものと説かれることが多いのですが、字源説には異論もあり、一つに決めきれません。和語のほうは「ふす」で、「臥す」と同根とする説が有力です。横たわる、身を低くする。自動詞「ふす」から他動詞「ふせる」が分かれるという対応は、日本語の動詞対によくある型でもあります。ここまで辿ると、「伏せる」の中心にあるのは隠すことではなく、高さを下げることのほうだったように見えてきます。

だとすると、先ほど書いた「隠す」の話は行き過ぎだったかもしれません。身を伏せるのは、必ずしも隠れるためではない。銃声を聞いて伏せるとき、人は隠れているのではなく、当たらない高さへ降りているだけです。「臥せる」と書く用字が病床の意に寄っていくのも、隠すのではなく低くなるほうが元にあると考えれば筋が通ります。それでも残るものがある。高さを下げれば視線は自然に下方へ落ち、上にあったものは視野から外れる。隠すことは、下げることの結果として後から生じている——順序が逆だった、ということです。この順序は些細に見えて、書くときには効いてきます。隠す意図を先に置くか、身体の傾きを先に置くかで、その人物の内面がどこまで書かれているかが変わる。

そして「目を伏せて」という形。「目を伏せる」が一つの出来事を指すのに対し、連用形に「て」がついたこの形は姿勢を指します。「目を伏せて答えた」と書けば、答えている最中もずっと視線は下にある。出来事が状態に変わり、後続の動作を包む枠になる——副詞句として働くとは、そういうことです。書き手がこの形を選んだ時点で、その人物は次の一文が終わるまで顔を上げません。数文字の短い形の中に、場面の長さが折り畳まれている。逆に「目を伏せた。そして答えた。」と切れば、視線はいったん戻る余地を持ちます。同じ動作を書きながら、どちらの形を選ぶかで、その人物が顔を上げる時刻が変わってしまう。

文: hakadoru.ai 編集部

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