ほとんど
【ほとんど】副詞使い分けの視点
「おおむね」「概ね」は全体傾向を慎重にまとめ、「あらかた」「大方」は残りが少ない見積もりに向きます。「九分通り」「九分九厘」は割合を比喩的に細かく示し、「ほぼほぼ」はくだけた強調です。「残らずといってよい」「ほぼ全て」は集合の範囲を示すため、未達の境界か単なる割合かを分けます。
同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
「おおむね」「概ね」は全体傾向を慎重にまとめ、「あらかた」「大方」は残りが少ない見積もりに向きます。「九分通り」「九分九厘」は割合を比喩的に細かく示し、「ほぼほぼ」はくだけた強調です。「残らずといってよい」「ほぼ全て」は集合の範囲を示すため、未達の境界か単なる割合かを分けます。
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。
例文: 観測者は断定の前へ毎回幅を置き、留保の四拍が語り手を作るほど、慎重な人物像を定着させた。
四拍。声に出せばそれだけの長さです。ほぼ同じ内容を担う短い語なら二拍で済み、漢語を使えばもう少し硬く短くまとまります。同じ機能に対して二拍から四拍以上までの選択肢が並んでいて、書き手はそのどれかを毎回選んでいる。意味がほぼ同じなら選択の基準は意味の外にあるはずで、そこには文のリズムと、その語が文全体の重心をどこへ動かすかという問題が残ります。計量的に文を眺めると、この種の選択がいちばん見えやすい場所です。
在庫の分布にも、拍数の偏りがあります。近い仕事をする語を並べてみると、二拍のものは数えるほどしかなく、おおむね、おおかた、たいてい、あらかたと、四拍のところに語が溜まっている。日本語では四拍の語形が安定しやすいと言われ、長い語を縮めた形も四拍に落ち着くことが多いようです。この副詞は、その最も収まりのよい長さをちょうど占めています。収まりがよいというのは、文の中で異物にならないということでもある。硬さも古さも感じさせずに挟めるので、書き手は自分が挟んだことに気づかないまま数を増やせます。同じ留保でも、五拍以上の漢語を選べば置いた自覚が残る。四拍は、自覚の残らない長さです。しかも四拍のこの一群の中で、範囲にも程度にも同じ形で乗れるのはこの語だけです。おおむねは範囲を、たいていは頻度を主に受け持ちますが、この副詞は人数にも分量にも到達までの近さにも掛かります。汎用の広さが、選ばれる回数をさらに押し上げている。
一文あたりの長さと、内容語の詰まり具合は、文体の手触りをかなり左右します。この副詞は程度や範囲を限定する語で、それ自体は何も指しません。指すもののない語が四拍を占める。しかも単独では文を終えられず、必ず後ろを要求します。つまり、一つ置くたびに文は確実に伸びる。伸びたぶんだけ断定は弱まる。慎重さにはコストがあり、この語の場合、そのコストは四拍という具体的な長さで支払われている——文体を数える視点に立つと、抽象的な「慎重な語り口」が、拍という単位に換算できてしまいます。
ここで自分の説明に異議を出しておきます。この語は本当に断定を弱めるだけでしょうか。ほとんど泣きそうだった、という言い方を思い浮かべると、弱まっている感じがしません。むしろ強い。限界の手前まで来ていることを示すぶん、単に泣きそうだったと書くより切迫します。数直線で言えば、目標の値に下から近づいていく運動が加わっている。到達していないことを述べる形式が、接近の距離を測る形式に転じる。同じ語が、範囲を狭めるときには弱め、程度を測るときには強める。弱化の語だと一括りにすると、この二つ目の顔を取り逃がします。
配置の問題もあります。文の前のほうに置くか、後ろのほうに置くかで、修飾の及ぶ範囲が変わる。登場人物のほとんどが、と書くのと、ほとんどの登場人物が、と書くのとでは、狭めている対象が微妙にずれます。前者は集合の中の割合を述べ、後者は集合そのものを限定した形で立ち上げる。読解の結果は近くても、読者が処理する順番が違う。そして文末に近づくほど、この語は文の締まりを削ります。終わりぎわに留保が来ると、文は着地せずに宙で止まる。それを狙う場合を除けば、留保は前へ寄せたほうが文は立ちます。
留保が重なる文も測っておく価値があります。この副詞は文の前方に立つので、文末の留保とは干渉しません。手を付けていないようだ、覚えていないと思われる。前でいちど範囲を狭め、後ろでもういちど断定を緩める——一文に緩衝材が二つ入り、事実の輪郭は二重にぼやけます。しかも二つは離れた位置にあるため、書いている側からは重なりが見えにくい。校正で拾うなら、文頭の副詞と文末の助動詞を別々に数えるより、同じ文に両方が入っている文だけを数えるほうが早く終わります。削るなら文頭からです。文末の助動詞を落とすと断定が立ち上がってしまいますが、前の四拍は抜いても文の構造に触りません。同じ一文の中で、断定から二度も逃げる必要はありません。
作品全体で見ると、この語の総数はそのまま語り手の性格になります。断定を避ける文が一定の密度を超えると、読者は語り手を、測ってから話す人物として認識し始める。それが設計なら問題ありません。慎重な観察者の視点を通したいなら、留保の語は多いほうが一貫します。困るのは、書き手が自分の言い切りに自信を持てないという理由だけで、この種の語が増えていく場合です。数えてみると、一場面に何度も出ていることがある。そのうち半分を削っても、事実の水準は変わりません。変わるのは、語り手が世界をどれだけ怖がっているかという印象のほうです。
文: hakadoru.ai 編集部
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