信じる

【しんじる】動詞

使い分けの視点

「信じる」は、人物が何を担保として選ぶかを示します。信頼・確信・信仰では根拠が異なり、複合動詞には持続や思い込みも加わります。一般小説では、言葉、行い、届いたしるしのどれに賭けるのかを場面へ置くと決断が具体化します。

同義語

同品詞の類義語

信頼する
盲信する文芸的
頼むcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

心を許す文芸的
全幅の信頼を置く文芸的
真に受けるcolloquial

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

岩盤のような文芸的
錨を下ろすような文芸的
太陽を仰ぐような

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

一途に文芸的
頭からcolloquial
微塵も疑わず

体言的言い換え

用言を体言に変換

信頼
確信文芸的
信仰文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

鵜呑みにするcolloquial
疑わない
額面どおりに受け取る文芸的

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

信じ切る

例文: 隊長を信じ切る副官だけが、偽の退却命令に従わなかった。

人と言——担保はどこにあるのか

偏と旁に分ければ、人と言。この二つを並べただけの字が、二千年を超えて使われ続けています。人の発することば、あるいは言ったとおりに行うこと。会意の説明としてはこのあたりが標準ですが、細部には異説もあり、旁を音を表す部分と見る立場もあります。いずれにせよ、この字の中心にはことばが据えられている。内面の態度を表す字でありながら、部品はどちらも外から見えるものだけでできている——出発点として、これはかなり示唆的です。

和語側の事情も見ておく価値があります。文語のサ変動詞「信ず」が、口語では上一段の「信じる」になった。同じ変化は案じる・感じる・応じる・命じるにも起きていて、漢字一字にサ変が付いた動詞の層が、まとめて活用の型を移しました。日常語のように使われていても、骨格は漢語です。純粋な和語の動詞と並べたときにこの語がわずかに硬く響くのは、その出自が残っているからだと考えられます。複合の側に目を移すと、その硬さを補う仕掛けも見えてきます。信じ込む、信じ切る、信じ抜く。補助的な動詞が付くと、態度の強度や持続や無理が一気に前へ出る。単独では強度を持たない語だからこそ、後ろに何かを足して強度を作る必要があった、という見方はできます。

対応する古い和語は「たのむ」でした。古語の「たのむ」には、四段活用で「あてにする」、下二段活用で「あてにさせる」という対があったと説明されます。信頼が一方向の心の動きとしてではなく、あてにさせる側の働きかけとセットで語彙化されていた。現代語ではこの対が失われ、「頼む」は依頼のほうへ寄りました。信頼という現象から、相手が仕向けるという半面が語形の上では見えなくなった、という言い方はできます。裏切りの物語がしばしば説得の物語として書かれるのは、失われたこの半面を、書き手が場面のほうで補っているからかもしれません。

この字を含む二字漢語を並べると、二つの系統が浮かびます。信頼・信用・信仰・確信・迷信は、まことの系統。通信・音信・信号・信書は、たより、しるしの系統です。同じ字が、内面の態度と外部の記号の両方を担っている。分裂しているようでいて、考えてみれば自然です。まことを保証するのは、結局のところ、届いたことばと後の行いが一致することでしかない。しるしの系統は、まことの系統を成り立たせている条件のほうを名指している。字の成り立ちに戻れば、人と言という二部品の関係が、そのまま熟語の二系統として展開したことになります。

創作の側へ引き寄せると、これは扱いやすい構造です。人物がこの動詞を口にするとき、何を担保にしているのか。相手のことばか、これまでの行いか、届いたしるしか。三つの答えが字の中に用意されていて、どれを選ぶかで人物像も、裏切りの起こり方も変わります。ことばだけを担保にしていた人物は、ことばで崩れる。行いを見ていた人物は、一度の例外では崩れない。しるしを頼りにしていた人物は、届かなかっただけで崩れる。この動詞を書いた次の行に、担保をひとつだけ置く。それだけで、輪郭のない重い語が具体的な形を持ちはじめます。

文: hakadoru.ai 編集部

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