それはさておき

【それはさておき】接続詞

使い分けの視点

話題転換の語には位相の階段があります。「閑話休題」は戯作や講釈の匂いを持つ書き言葉の極、「そんなことより」は親密さと紙一重の乱暴さの領域で、この語はその中間に位置します。会議でも目上にも使えるのは、「さておく」が捨てるのではなく脇へ置く動きだからです。あとで拾い直す余地を残して話題を退避させる——その礼儀が、転換の角を布でくるんでいます。どの語を選ぶか自体が、すでに人物像の演技になります。

同義語

同品詞の類義語

ところで
閑話休題文芸的
話は変わるが
それはともかく

類義句

同品詞の慣用的言い換え

話を戻すと
余談はさておき
閑話を措きて文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

そんなことよりcolloquial
ま、それはいいcolloquial
話はそれるが

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

敷居エッセイ関連

例文: 手紙には、挨拶と用件のあいだにいつも一拍の敷居がある。それを踏まずに用件へ飛び込む文は、内容ではなく層の越え方で不躾に読める。

位相エッセイ関連

例文: 芝居の書き直しは、転換語の割当から始まった。強引な役には「そんなことより」、如才ない役にはこの語。台詞係は位相の階段を一行ずつ確かめてから、次の場面へ移る。

脇に置くという礼儀——話題転換語に刻まれる言葉の層

「閑話休題」という四字の言い回しは、しばしば「さて余談ですが」の意味に取り違えられることで知られています。本来は逆で、余談を打ち切って本筋へ戻る合図——「むだばなしはさておき」です。この誤用が絶えないこと自体、話題を切り替える言葉への需要の大きさを物語っています。誰もが話を切り替えたい。ただし、その切り替え方には、話し手の属する言葉の層が身分証明のように刻印されます。

同じ「話題を切り替える」機能の語を並べてみると、位相の階段がきれいに見えます。「閑話休題」は漢語で、戯作や講釈の地の文の匂いをまとう書き言葉の極です。「それはさておき」は和語系で、書き言葉にも、改まった会話にも収まる中間層にあたります。「話は変わるけど」は日常会話の標準域で、「そんなことより」は親密さと紙一重の乱暴さの領域です。意味はほとんど同じなのに、使い手の顔だけが違う。どの語を選ぶかということ自体が、既に人物像の演技になっています。しかも位相は人に張り付くのではなく場面に張り付くもので、同じ人が会議では中間層を、家族との夕食では「てか」を使い分けるのがむしろふつうです。

書き言葉の側にも、転換の定型は古くから磨かれてきました。手紙では、時候の挨拶からなる前文を締めて用件に入るとき、「さて」と置くのが定石です。この「さて」は「さておき」と同じ語根を持つ転換の合図で、挨拶という儀礼の層と用件という実務の層のあいだに、一拍ぶんの敷居を作ります。敷居を踏まずにいきなり用件へ飛び込む手紙が不躾に読めるのは、内容の問題ではなく、層の越え方の問題です。話題転換の語彙は、会話と手紙の両方で、層と層の継ぎ目を滑らかにする蝶番として働いてきました。

注目したいのは、位相の階段が、丁寧さの階段と微妙にずれていることです。「そんなことより」は、相手の話題を無価値だと宣告して押しのけます。「それはさておき」は違います。「さておく」は「さて置く」——いったん脇へ置く、です。捨てるのではなく、あとで拾い直す余地を残して退避させます。転換されて脇へ寄せられた話題にも、敬意の置き場所が確保されているわけです。話題の転換は本質的に相手の話を遮る行為ですが、この語はその角を布でくるんでいます。会議で使え、目上にも使える理由がここにあります。

人物を書き分けるとき、台詞の中身より先に、転換語を配ってみる手があります。強引な上司には「そんなことより」、如才ない同僚には「それはさておき」、浮世離れした老学者には口に出して言う「閑話休題」を割り当てます。中身のない語ほど人物が出るというのは台詞設計の経験則で、話題転換語はその筆頭です。さらに、一人の人物の転換語が相手によって切り替わるなら、それは距離の使い分け、つまり社会性の描写になります。物語の要所で、誰が、どの言い方で話を切り替えるか。脇に置かれた話題の扱い方には、その人物の、他人の扱い方が透けて見えます。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →