そのうえ

【そのうえ】接続詞

使い分けの視点

「そのうえ」は、前件へ同じ方向の情報を追加する標準的な接続です。報告書では整然と響き、同じ内容を友人へこぼせば「高いし、おまけに遅い」に変わります。「おまけに」は感情の上乗せに寄り、「それに」は会話で軽く足すのに対し、この語は前件を一まとまりとして受け、二つ目を整った論理の段へ置きます。追加する二項が同じ評価方向にあるか確かめると、接続を選ぶ人物の声——報告の声か、愚痴の声か——も一緒に見えてきます。

同義語

同品詞の類義語

おまけにcolloquial
なおかつ文芸的
あまつさえ文芸的
プラスcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

それに加えて
加うるに文芸的
それもcolloquial

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

あろうことか文芸的
ひいては文芸的
そればかりか

関連語を探す

語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

その上エッセイ関連

例文: 「その上、雨だ」と書かれたメモは、空間の上方ではなく、話の続きを指していた。字面が同じでも、読む方向が違う。

それにエッセイ関連

例文: 口頭なら、それに、で済む場面だった。彼があえて硬い形を選んだのは、その部屋が報告の部屋だったからだ。

報告書と愚痴のあいだ——「そのうえ」の使用域

報告書なら「費用が増えた。そのうえ工期も延びた」と整然と書けます。同じ内容を友人へこぼすなら、「高くなったし、おまけに遅い」と言うかもしれません。「そのうえ」は前件へ同方向の情報を追加する標準的な接続表現ですが、会話、論説、職場、家庭で選ばれ方が違います。地域差だけでなく、書き言葉と話し言葉、専門文と雑談の差も位相です。意味が通じることと、その共同体で自然に口から出ることは別です。誰がどの媒体で無標に使うかを見ると、標準語内部の層が現れます。

漢字で「その上」と書くと、物理的な上方と追加の接続が同じ字面になります。「机のその上」なら空間、「その上、雨だ」なら談話上の加算です。仮名の「そのうえ」は接続機能を先に読ませ、一般向けの文章へなじみやすい。媒体の表記方針によって選択は変わり、話者の発音には差がありません。位相差は音声だけでなく、編集と組版にも存在します。公的文書では表記統一が個人の好みを上回り、私信では書き手の癖が出やすい。同じ人物でも媒体に応じて字面を替えます。翻訳調の文章では moreover や furthermore に対応させてこの形が増える場合がありますが、原語との一対一置換ではありません。日本語の会話なら接続を省き、語順だけで追加を示すこともある。翻訳者、編集者、媒体の規範が選択に加わるため、硬さを作者個人の性格だけへ帰せません。文章は複数の専門的な手を通って位相を得ます。

話し言葉の競合形には「おまけに」「しかも」「それに」があります。「おまけに」は感情的な上乗せや不満に寄りやすく、「それに」は会話で軽く項目を足せる。「そのうえ」は前件を一まとまりとして受け、二つ目を比較的整った論理の段へ置きます。違いは絶対ではなく、イントネーションと内容で揺れますが、置換すると人物の教育的・職業的な声が変わる場合があります。子供が大人の報告口調をまねて使えば可笑しさが生まれ、研究者が家庭でも使えば職業語が私生活へ染み出した印になります。

同じ話者の中でも、書く場面と話す場面で選択は割れます——手紙やメモではこの形を選び、口頭では「それに」で済ませる人がいて、その差は誤りではありません。改まった場面でこの形へ切り替わる瞬間を一度描けば、人物がどの文体を持ち札にしているかが伝わります。家族には「それに」、上司には「そのうえ」と言う差は、優劣ではなく、場面ごとの自己調整です。

創作では、追加する二項が同じ評価方向か確かめます。「安く、そのうえ軽い」なら利点が積み上がり、「高く、そのうえ重い」なら不利が重なる。方向が逆なら「しかし」など別の関係が必要かもしれません。接続語の硬さだけを人物に貼らず、何を同じ棚へ並べたかまで見ることです。社会的な声は単語単体で決まらず、前後の文長、敬語、具体性とともに現れます。整った追加表現がどの部屋で自然に響くかを選ぶと、情報と話者の居場所が同時に伝わります。

文: hakadoru.ai 編集部

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