高い

【たかい】形容詞

使い分けの視点

「高い」は全長、位置、価格、音程、能力を一語で担う。「そびえる」は地面からの全長、「頭上に」は位置、「値が張る」「法外」は価格に限定する。「抜きん出る」は比較集団内の卓越。直前に値札、頂、声など尺度の手掛かりを置き、曖昧さを制御する。

同義語

同品詞の類義語

そびえる文芸的
法外な
壮大な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

天を衝く文芸的
値が張るcolloquial

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

雲を貫くような文芸的
見上げるような
気が遠くなるほどのcolloquial

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

ぐんとcolloquial
頭上に
そびえ立って文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

そびえ立つ文芸的
跳ね上がるcolloquial
抜きん出る文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

巨峰文芸的
文芸的
暴騰

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

巍々たる文芸的
天空に文芸的
破格の
桁違いのcolloquial

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

尺度の手掛かりエッセイ関連

例文: 値札を先に見せてから「高い」と言わせる。「尺度の手掛かり」が、背丈でも音程でもない価格へ台詞を定めた。

tall と high のあいだ——尺度をどこで割るか

「この塔は高い」を英語に移すとき、tall と high のどちらを選ぶかで、文の焦点がずれます。tall は地面から立ち上がっている物の全長を言い、high は地面からどれだけ離れた位置にあるかを言う。塔はどちらでも成立し、雲は high としか言えず、人については tall しか使えません。同じ「上のほう」を指す語が、対象の性質によって二つに割れているわけです。日本語はこの区別を持ちません。全長も位置も、ひとつの形容詞が引き受けている。訳すときに迷いが生じるのは、日本語の語彙が粗いからではなく、割り方の違う二つの体系を突き合わせているからです。

構文の側にも差があります。英語は人を主語にして he is tall と言えるのに、日本語では「彼は背が高い」と、背という部位をいったん立ててから測る。測定対象を明示してから尺度を当てる、という手続きを踏むわけです。この癖は値段の話に移るともっと目立ちます。「値段が高い」は the price is high でよいのに、「この本は高い」を this book is high とは言えず、expensive という別の語が要る。英語では、尺度そのものを主語にするか、尺度を持つ物を主語にするかで語彙が切り替わる。日本語にはその切り替えがなく、本にも値段にも同じ語を当てられます。韓国語も 높다 と 비싸다 で分かれ、中国語も 高 と 贵 が別の字です。価格の高さを空間の高さと同じ語で最後まで言い切れる言語のほうが、周辺を見渡すと少数派に見えます。

ところが、反対語の側を見ると日本語も一枚岩ではありません。空間の反対は「低い」ですが、値段の反対は「安い」であって、「この本は低い」とは言えない。肯定側は一語で通せるのに、否定側では二語に割れている——同じ尺度でも、上と下で分節の細かさが違う。尺度形容詞の対は必ず対称になるはずだ、と考えたくなりますが、実際にはこういうねじれが平気で残ります。翻訳で困る箇所は、たいていこの非対称の縁にある。

音の高さも同じ空間比喩に見えて、これが普遍だとは限りません。古代ギリシャ語では、音の高さを鋭さと重さで呼び分けていました。今日のアクセント記号がアキュート(鋭)とグレーブ(重)という名で呼ばれているのは、その名残です。高低の軸で音程を語ることは自然に感じられますが、鋭さと重さの軸で語る体系も現に存在した——上下は、選ばれた比喩のひとつであって、唯一の選択肢ではない。一方で抽象的な領域に入ると、逆に言語間の一致が増えます。可能性が高い、地位が高い、熱が高い。いずれも英語で high を使って言える。分岐が起きるのは具体物を測るときで、抽象度が上がるほど語彙の切れ目が揃っていく。翻訳者が手を止めるのは、議論の箇所よりも、塔や本や声といった目の前にある物を測る場面です。

書き手の側から見ると、訳しにくさはそのまま使い勝手になります。一語で複数の尺度を渡れるので、意図的に決めずに置ける。「彼の望みは高すぎた」と書けば、高度なのか高価なのか、日本語は最後まで決定しません。ただし決めずに置ける利点は、決めなければならない場面で欠点に転じます。会話文で「高いですね」とだけ言わせると、値段か背丈か位置か音か、読者は前後を探しに行く。台詞の一つ前の行に、値札か天井かのどちらかを置いておく。尺度の手がかりを先に渡しておけば、この語はどこまでも伸びます。

文: hakadoru.ai 編集部

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