ゆったりと

【ゆったりと】副詞

使い分けの視点

「悠然と」「鷹揚に」は堂々とした余裕、「おおらかに」「おっとりと」は性格や動作の穏やかさです。「のんびりと」「寛ぐ」「肩の力を抜いて」は緊張のない休息を示します。「余裕をもって」「ゆとりを持つ」は時間や資源の幅、「大河のような」「凪の海のような」は広がりや静けさを比喩化します。

同義語

同品詞の類義語

悠然と文芸的
おおらかに
のんびりとcolloquial
おっとりとcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

余裕をもって
肩の力を抜いてcolloquial
ゆとりを携えて文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

大河のような文芸的
湯舟に浸かるように文芸的
凪の海のような文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

寛ぐ
腰を落ち着ける
ゆとりを持つ

体言的言い換え

用言を体言に変換

ゆとり
悠然文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

鷹揚に文芸的
おもむろに文芸的
穏やかに

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

五拍ぶん場面を減速するエッセイ関連

例文: 長い文の動詞前へ副詞を置き、五拍ぶん場面を減速する効果を音読で確かめた。

五拍の減速装置——文の長さの分布から見た「ゆったりと」

手元の原稿から一章分を選び、句点で文を切って、それぞれの文字数を数えてみます。平均は四十字前後、最短は八字、最長は九十字——そんな分布が出たとしましょう。数字にして初めて気づくのは、平均よりも散らばりのほうが文体の印象を決めているということです。短い文ばかりが続く章は速く読め、長い文が連なる章は遅く感じられます。そして緩急の落差が大きい文章は、読んでいて呼吸が動きます。文の長さの分布は計量文体論と呼ばれる分野の基本項目で、古くは作者の推定に、いまは文体の特徴づけに使われてきました。道具としては地味ですが、自分の癖を映す鏡として、これほど正直なものもありません。

この分布のなかで「ゆったりと」はどこに現れるでしょうか。経験的には、長い文のなかです。ゆ、っ、た、り、と——五拍のうち一拍を促音が占め、語のなかにあらかじめ小さな休止が埋め込まれています。この語を動詞の前に置くだけで文は五拍延び、読点を伴えばさらに一呼吸増えます。「湯に浸かった」と「ゆったりと湯に浸かった」を音読して較べると、後者は意味を解する前に、まず発音の時間として遅いのです。黙読のときも頭のなかで音韻はなぞられていると考えられていますから、この五拍の遅延は、声に出さない読者にも届いていることになります。

拍の数え方をもう少し続けます。日本語の詩歌が五と七で編まれてきたことはよく知られていますが、散文の一節も、音読すればおのずと拍のまとまりに割れます。五拍のこの語は、それ自体がひとつの音数のまとまりとして自立して、前後に半拍の間を呼び込みやすいのです。「ふと」の二拍や「静かに」の四拍が文の流れに溶け込むのに対して、五拍は一瞬、流れをせき止めます。せき止められた分だけ、読者の内部で場面の時間が延びます。意味が遅さを表すだけでなく、語形の長さそのものが遅さを演じているわけで、形が意味を模倣するこの性質は、言語学で類像性と呼ばれます。

裏を返せば、緊迫した場面にこの語をうっかり置くと、五拍ぶんだけ場面の心拍が下がります。追跡の段落、口論の段落でこの語を見つけたら、削るだけで文章は目に見えて速くなります。効果が文字数と拍数で見積もれるので、推敲が勘の作業でなくなるのが計量の利点です。あわせて効くのが読点の間隔で、長い文でも読点が多ければ息継ぎが増えて速く感じられ、読点が少なければ一息が長くなります。ゆるやかな場面を書くとき、書き手はしばしば無意識に、文を延ばし、読点を減らし、この種の副詞を増やしています。三つの操作が同時に起きるため、どれが効いているのか自分でも分かりません。一度、副詞だけを抜いた版を作って読み較べると、この語にどれだけ減速を頼っていたかが、感覚ではなく差分として見えてきます。

文学を数えて何になるのか、と計量文体論はしばしば言われます。実作者にとっての効用ははっきりしていて、印象を操作可能な変数に分解してくれることです。場面のテンポは才能の秘密ではなく、文長と読点と拍数のおおよその関数である。そう考えれば、ゆるやかさは偶然書けるものではなく、設計できるものになります。五拍の副詞一語は、その設計図のなかで最も安価で、効果の見積もりが最も立てやすい部品です。

文: hakadoru.ai 編集部

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