ちょっとした

【ちょっとした】連体詞

使い分けの視点

小さくても価値のあるものには「ささやかな」「なかなかの」、重要でないものには「些細な」「取るに足らない」が合います。「ふとした」「ほんの偶然の」は規模ではなく発端の偶然性を示します。控えめな言い方が賞賛へ反転するか、過小評価のままかは後ろの名詞と文脈で決めます。

同義語

同品詞の類義語

ささやかな
些細な
なかなかの
ふとした

類義句

同品詞の慣用的言い換え

取るに足らない
ものの数ではない文芸的
ささいな

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ほんのささやかな
言わばささいな
ほんの偶然の

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語釈エッセイと合わせて読む表現

下の語釈エッセイの論点とつながる言い換え・関連表現です。

大したエッセイ関連

例文: 初めて海を見た少年は、水平線を歩いて越えようとする大した冒険家になった。

大したことのない

例文: 大したことのない擦り傷だと笑った騎士の腕には、石化の模様がゆっくり広がっていた。

小さく言って、大きく直させる——連体詞の振れ幅はどこから来たか

「ちょっとした怪我」は大したことのない怪我です。「ちょっとした人物」は大したことのある人物です。同じ連体詞が、修飾する名詞によって正反対に振れる。しかも読者は迷いません。文脈が決めてくれるからだと言えばそれまでですが、なぜこの一語がそこまで広い振れ幅を許されているのかは、形を分解しただけでは出てきませんでした。振れるのなら、どこかに振り分けの装置があるはずです。

分解自体は難しくない。量の少なさを言う副詞に、した、が付いた形です。ちと、ちっと、と続く系列で説明されることが多く、この一族に属します。付いている「した」は動詞の過去形ではありません。大した、ちゃんとした、と同じ型で、状態を表す連体詞をつくる接尾のようにふるまっている。過去の意味はとうに抜け落ちていて、時制としては読めない。語の歴史が、形だけ残して意味を落としていった跡です。前半についても、ちと から促音を挟む形へ、さらに拗音を伴う形へ、と説明されることが多いものの、成り立ちには複数の説があります。確かなのは、量の少なさを言う語が、変化のたびに口の中で場所を取るようになったことです。小さいと言うために、音は大きくなっている。

同じ型の「大した」も両方向に振れます。ただし振れ方に規則があって、否定を伴えば小さく、伴わなければ大きい。大した怪我じゃない、大した男だ。振り分けているのは文の形です。ところが今回の語は否定を必要としません。肯定文のまま、後ろに置く名詞だけで上にも下にも行く。同じ型に属しながら、振り分けの装置が文の外側、つまり名詞の側へ移っている。装置の位置が違えば、使い方も違ってくるはずです。文の形で決まるなら書き手が制御できますが、名詞で決まるなら、制御しているのは名詞のほうになります。

思いつく説明は、控えめに言うことで実際の大きさを示す言い方です。ささやかな店ですが、と前置きしてから相当な店を出す。謙遜が反転を生む。ただ、これでは足りませんでした。「ちょっとした騒ぎになった」に謙遜する主体はいません。語り手が自分の手柄を小さく言っているわけでもない。ここで起きているのは、語り手が事態を小さく見積もる構えを取り、その見積もりが低すぎることを読者が自分で察する、という二段の運動です。誇張の逆——小さく言って、読者に大きく直させる。

だとすると、この語は読者の見積もり能力に寄りかかっています。読者が直せる範囲でしか反転しない。「ちょっとした殺人事件」と書けば、直しようがなくて滑稽になる。振れ幅には上限があり、その上限は語の側ではなく読者の側にある——書き手が制御できる部分は思ったより狭いということです。使うときに確かめるべきは、修飾される名詞が、読者にとって自力で大きさを見積もれるものかどうか。日常の範囲にある名詞なら、この語は説明せずに済ませる余白をつくります。読者の経験の外にある名詞に付けると、余白ではなく空白になる。

文: hakadoru.ai 編集部

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